2015-02-07

再考させられた、レファレンス
(日本看護図書館協会セミナーに参加して)

もうすぐ、バレンタインデーですね!
私も全国の女性ライブラリアンから多くのご厚意を頂くべく、毎年早くから気合を入れています!(82%くらい本気)

無謀にもそんな日に企画頂いた「2/14(土)東京で「空手家ライブラリアン」井上昌彦さんを囲む会」ですが、まだ数席残席があります。よろしければ、ぜひ!



★看護図書館員のための文献検索教育セミナー


さて、本題です。
1月24日(土)に、日本看護図書館協会 看護図書館利用者サービス研究会が主催する同セミナーに、参加してきました。開催主旨等は、案内サイトでご覧ください。

会場は京都だったのですが、講師がかの諏訪敏幸さんとあって、片道2時間以上をかけて参加しました。諏訪さんは、大阪大学生命科学図書館で15年以上(※)レファレンス・カウンターに座ってこられた、ある種レジェンド的な方です。
(※)国立大学では基本3年で異動ですので、こうしたベテランの存在は、例外中の例外と言えるでしょう。
私も前に一度諏訪さんのお話を伺ったときには、軽い衝撃すら感じたものです。


★「看護図書館員による文献検索の教育を考える」


今回の諏訪さんのご講演は標記タイトルで、前回以上に充実したものでした。以下、講演で印象的だった点です。
  • 「レファレンス・カウンターこそが教育サービスの中核」であり、「授業はカウンターへの入口」と位置づける。
  • 週にせいぜい3時間しかない授業の教育効果を過信しない。その人に何が必要かは、対面して初めて分かる。レファレンスは、情報提供ではなく教育。自覚と責任が必要。
  • 多くのライブラリアンは「いかに教えるか」に腐心しているが、まず「何を教えるか」を考えるべき。「OPACの使い方」「○○システムの検索法」などは、情報提供であっても教育ではない。
  • ニーズは、掘り起こせば顕在化する。情報提供は、利用者の自覚的要求に応えるもの。教育は、利用者がまだ自覚していない問題を教えるもの。満足度調査はdemands・wantsへの充足率を図るものだが、教育はdemands・wantsを越えて初めて教育になる。
  • 研究のために求められる系統的検索は、日常的に行われる発見的検索とは、目的・方法が違う。利用者が自分でこれに気付くことはほぼ不可能で、ゆえに教えなければいけない。
  • 先行研究調査とは、研究状況の地図を描くということ。系統的検索は、研究状況全体の情報を得るということ。発見的検索とは、目的も方法も異なる。系統的検索を教えてくれるのは、図書館員しかいない。
  • 文献に関する知識・入手だけではなく、文献評価・整理、著作権、アカデミックライディング(特に文献引用)などの教育活動で、図書館は教育・研究に寄与し得る。
  • 相談してよかった、と思われることが信頼関係につながり、図書館への次の要求につながる。その利用者が、図書館の素晴らしさを広めてくれる。

当日の私のツイートのまとめを作成していますので、併せてご覧ください(他はほとんど誰もツイートしていなかった様子・・・)。


★雑感


講演をお聞きして、突き詰めてものごとを考えている人はスゴい、と感心させられました!

日頃何となく座りがちなレファレンス・カウンターも、そこにどれだけの意味を持たせられるかは、結局のところライブラリアン次第なのですよね。
改めて、自分が毎日やっているレファレンスのあり方について、よく考えてみようと思いました。

また、この話はそのままガイダンスにも置き換えられるようにも思いました。ガイダンスも私の館では重点項目の一つですので、併せて考えていきたいと思います。


ところで。
諏訪さんのおっしゃる系統的検索は、検索の本質の一つでもあると思いますが、医学・看護分野でないとなかなか本領が発揮しにくいかもなあ・・・とも思いました。

系統的検索は、豊富で統制されたキーワードでこそ真価を発揮するもの、と理解しました。
その意味では、他分野においては同じアプローチは困難で、全く同じことをやろうとしても難しいかもしれません(この点は、諏訪さんも認めておいででした)。

ですが、自分たちで業務のあり方を徹底的に考えてデザインするという本質は、どんな図書館においても諏訪さんから学べるはず、とも思いました。
もう一度諏訪さんの著書「系統的文献検索概説 ―看護研究者・医療研究者のための―」を読んで、よく考えてみたいと思います!



さて、質疑応答のときに、「こんなに頑張れたのは、諏訪さんがいたからでは?個人に依存したサービスになっていたのでは?」と根性の悪い質問をしてみました。(笑)
ですがそこは諏訪さん、しっかりと後進にそのマインドを残していたようで、今も利用の多い時間帯は、レファレンス・カウンターは混み合っているそうです。恐れ入りました!


★お決まりの不満


そして、お決まりになりつつある不満も。(苦笑)
これほど濃厚な2時間の講義を伺って、質問が2件しか出ないのは、どうなんでしょうね?(しかも最初の1件は私)

このレベルの講演を聞くことなど、滅多にないはずです。プロのライブラリアンが半日を費やして学んだのですから、質量ともに講師が窮するくらいの質問を投げかけないといけませんよね。

こういっては何ですが、質問もろくに出来ないプロ集団なんて、あり得ないと思います。
外部から参加した人には、「この協会では、質問も出ないのか?」、「図書館員は黙って話を聞くだけで精一杯なのか」と思われても仕方ありません。
(これは陰口になってはいけませんので、当日事務局の方々にもお伝えしました)

聞き手が、お客さんになってはいけません。聞き手も主体的に参加し、講師と討論することで互いに学び合える関係をつくっていくべきではないでしょうか。
そうしてこそプロフェッショナルであり、ライブラリアンが社会から専門職として認知されるためには、こうした姿勢が必要ではないでしょうか。


・・・と最後はいつものアレになってしまいましたが、非常に有意義な会でした!諏訪さん、日本看護図書館協会の皆さま、貴重な機会をありがとうございました!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
今月2日に、きょーこは1歳半になりました。ここまで、健やかに成長してくれています。先日の節分も、わが家で楽しく過ごすことができました。


口の横に豆がついてる、きょーこ

れいこが元気だったときは、いつも私に全力で豆を投げつけてきたものです。
れいこは男前だったので、手加減しらず。痛くも、楽しい思い出です。

きょーこがいつか、お姉ちゃんのように力いっぱい豆を投げてこれるくらい、元気に育ちますように!れいこも、きっとそれを願っていることでしょう。

2 件のコメント:

  1. 空手家図書館員井上さんこんにちは。
    セミナー後の懇親会でプライベート名刺交換をさせていただいた者です。個人ブログもSNSもやっていませんので、匿名でのコメントとさせていただきます。
    諏訪さんのお話は日常の検索授業やレファレンス業務に役立つ内容でした。ただ、系統的検索の本領は医学・看護分野以外では発揮しにくいかな・・・という井上さんの感想には共感します。私は5年前から看護系図書館に勤務していますが、異動して初めて医中誌などの医学系データベースに触れてその便利さに感心しました。前任者からの引き継ぎで年間10回ほどの検索授業を担当し、文献検索に関する相談も受けていますが、「系統的検索」という考え方はあまり理解していませんでした。諏訪さんの参考カウンター15年の経験からの気づきなのでしょう。
    さて、井上さんの書かれたご不満について。
    参加者の一人として、そして主催団体の会員の一人として、井上さんからお叱りをいただいたように感じました。
    私も諏訪さんのお話の中で気になった点をメモしていましたが、質疑応答の時間までに整理できず、時間が押してしまったこともあって質問できずじまいでした。
    私以外にも質問したかった参加者はたくさんいらっしゃったと思いますよ。
    事務局(協会の有志グループ)の進行にも問題はあったとも思いますが。
    歯に衣着せぬ表現は井上さんの(このブログの)個性なのでしょうが、もうちょっと参加者を思いやるような書き方をされてもよかったのではないでしょうか。

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  2. >匿名さん、
    コメントをありがとうございます!

    諏訪さんのお話は、看護分野の方であっても、そのように重要なものなのですね。
    看護分野のライブラリアンが有意義な学びをできていたら、とても嬉しいことですね!


    >歯に衣着せぬ表現は井上さんの(このブログの)個性なのでしょうが、もうちょっと参加者を思いやるような書き方をされてもよかったのではないでしょうか。

    不快な思いをさせましたこと、お詫びします。
    一方で、ご指摘の点は、私としてはむしろもっと声を大にして訴えなければならないことだと思っています。

    ライブラリアンはその多くが熱心で勤勉でありながらも、ああした場で活発な意見を交わすことが致命的に少ないと思っています。
    講師の話を一方的に聞くだけでしたら、UstかEラーニングのようなもので済んでしまうのではないでしょうか。

    今のライブラリアンや図書館が置かれた現状を考えれば、「質問したかった人が大勢いた(はず)」といったことを言っていられないと考えます。

    それこそ、今日明日にも私たちが研鑽を積み、討論を重ね、それを社会的に認知してもらわなければいけないと考えています。
    身内の研究会での討論もできずに、それをどうやって社会に訴えるのでしょうか。

    今私たちが社会に対し、プロとしての技量や見識を磨きつつ、図書館の価値を訴え伝えていかなければ、図書館はますますその意義を失います。それがひいては、社会的な大ダメージになるのではないでしょうか。

    (実際、総体としてみれば図書館界がそれをしてこられなかったがために、現在の状況があるのだと考えます)

    私の書き方が不遜で適切でなかった面は多々あると思いますが、図書館界のために、あえてこうしたことを口にしていかなければいけないと感じています。

    図書館員の中にあえてこうした視点を持ち、それをあえてオープンに語る人間がいることには、一定の意義があると考えています。

    参加者全員が「良かった」「勉強になった」ではなく、こうした面にも目を向け、お互いに厳しく律していかなければならないと考えています。
    違うご意見もあろうとは思いますが、ここは自分の信念に近い部分であり、ご理解を頂ければと思います。

    なお、事務局の運営には、全く問題がなかったと感じていますし、事務局や協会の皆さんには貴重な場を提供くださったことを本当に感謝しています。

    ご意見、ありがとうございました。

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