2015-06-16

ライブラリアンよ、メディアを疑え!?

先日からご案内しています、内野安彦先生をお招きしてのイベント2連発が、だいぶ近づいてきました。
私が支部長をしていますダイトケン兵庫支部による渾身の企画で、あらゆる館種のライブラリアンにご参加頂きたいと思います。まだ席に余裕もありますので、ぜひ!




★発端


さて、今回は新聞に関する話です。
先日、とある新聞記者さんの素晴らしいお話を伺う機会があり、新聞というメディアへの関心が強くなっていました。そんな矢先、私が敬愛するとある方による、以下のような書き込みを目にしました。

集団的自衛権が意見であるかどうかという議論が、全国紙のY新聞ではほとんど記事になっていない。地元新聞との報道の違いは、驚くばかり。大手メディアであっても、「報道をしない」という選択があることを知った。
(井上による意訳)

主義主張の違いはあれど、全国紙でそれほどに報道に差があるものでしょうか・・・?気になったので、少し調べてみたところ、意外な結果に驚かされました。


★新聞記事の比較方法


国民的議論を要すると思われるこの件、どのくらい各紙で扱われているのか、以下のように比べてみました。

  • 比較対象は、朝日・読売・毎日・日経・産経の5紙とした。
  • 内容そのものの評価ではなく、各紙に記事として掲載された件数を量的に比較した。地方面などを含め、各社が提供する商用データベースの検索結果全てをカウントした。

  • 比較対象期間は、今年6月4日の衆院憲法審査会(*1)〜6月14日(*2)までとした。
    (*1)同審査会にて、参考人であった3人の有識者全員が集団的自衛権の行使容認について「違憲」と表明したことにより、加速的に議論が白熱したと考えられる。
    (*2)各データベースを検索比較したのが6月15日であり、その前日14日までに掲載された記事で比較した。これは、15日分が当日反映されているデータベースと、そうでないものの検索結果に差が出ることを避けるための措置である。


  • 検索キーワードは「違憲」および「長谷部」(*3)とし、そのいずれも含む記事を、本件の報道記事と見なした。
    (*3)同審査会で、与党が推薦した長谷部恭男早稲田大学教授。与党が推薦したにも関わらず同氏が違憲と表明したことにより、野党の追及が一段と厳しくなったと思われる。

いろいろ粗があるとは思いますが、正確な研究でもありませんので、厳密な定義等は不要ということにしました。
今回の目的は、新聞各紙の取り扱いに違いがあることを傾向として読み取ることです。報道の多寡を批判したり、学術的な結論を導くことが目的ではありません。


★調べてみたら


さて調べてみた結果ですが、予想以上に大きな差が出ました。

  • 朝日・・・16件(5.33)
  • 読売・・・3件(1.00)
  • 毎日・・・12件(4.00)
  • 日経・・・6件(2.00)
  • 産経・・・4件(1.33)
    (カッコ内の数字は、最小の読売を1.00としたときの指数)

最小の読売はわずか3件の報道に留まっているのに対し、最多の朝日は16件もの記事を掲載していました。朝日は、上記審査会翌日の社説を含め、9日間連続の報道を行っています。それに対し、読売は中5日も報道がない時期もありました。

非常に短期間であり限定されたサンプルではありますが、国家の行く末を巡る議論であるにも関わらず、報道傾向に大きな温度差が読み取れるように思います。




★ついでに


この傾向が本件だけに特有のものかどうか、ついでに調べてみました。
新聞により、記事総数そのものに大きな差がありそうですが、これらのデータベースでは全体の記事数を見ることができず、その点での比較は断念しました。

そこでいくつか政治関連のキーワードを選び、同期間中の掲載記事数を比較してみました。

    【キーワード:自民】
  • 朝日・・・202件(1.22)
  • 読売・・・166件(1.00)
  • 毎日・・・191件(1.15)
  • 日経・・・69件(0.42)
  • 産経・・・97件(0.58)
    (カッコ内の数字は、読売を1.00としたときの指数)

他に「国会」や「野党」などといったキーワードで検索をしたときも、同指数は最大で1.77(朝日)に留まりました。

他方、「集団的自衛権」で検索した場合、指数は2.78(朝日)とグッと高くなりました。
また、この「集団的自衛権」で検索対象期間を2015年、2014年、2012〜2014年などと変えても、指数はそれぞれ2.34、2.72、2.42と非常に高いままでした。両紙の間で、このテーマに関する掲載の傾向が明らかであるように感じられました。


★結論


このテーマでは、朝日と読売の掲載方針が顕著に違うことが、読み取れたように思います。ここまででないにしろ、他紙にも一定の傾向が見られるように思いました。

もっともこれは先に述べたように厳密なものではありませんので、あくまでもその程度のものとご理解ください。
さらに言えば、こうした掲載傾向は、記事の主張内容とも密接な関わりがあるようにも感じますが・・・ここでは内容の評価には踏み込まないのでしたね。(笑)

このラフな調査で一つの傾向として読み取れたことは、全国紙・大手メディアと言えども、その報道は一律ではないということです。
私は、いいも悪いも含めて、どのような記事を掲載するか判断する行為そのものが、恣意的でしかあり得ないと思います。

ここで私が言いたいことは、どの新聞が優れている、といったことではありません。

様々なメディアが自説を主張することは、民主主義において非常に健全な姿でもあります。ですが「『報道をしない』という選択」がなされたり、逆に過度な主張が行われたりする可能性もあり、我々は常にメディアのフィルターを通して物事を見ていることを自覚するべきでしょう。

もしかすると、私たちライブラリアンが利用者に伝えるべきことは、データベースの検索方法などではなく、批判的思考でもってメディアと接することなのかもしれませんね。

こうして調べてみたことを、また次のガイダンスで活かしていけたら・・・と思います。



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
週末の朝、私が目を覚まして隣を見ると、きょーこがスゴい格好に。(笑)


どうしてわが子がゴミ箱をかぶり、足を壁に突っ張って、お腹を丸出しにして寝ているのか、私にはどうしても理解できません。(笑)


きょーこがいてくれるおかげで、私たちは笑って毎日を過ごすことができます。
れいこを失った悲しみが癒えることはありませんが、きょーこの存在が、私たち家族に笑顔を取り戻してくれます。

ありがとう、きょーこ。れいこお姉ちゃんの分まで、元気に育つんやで〜!
れいこも、応援してやってな!!

2 件のコメント:

  1. こ、この寝像は凄い、凄すぎる・・・

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  2. >匿名さん、
    >こ、この寝像は凄い、凄すぎる・・・

    ですよね。
    私も、笑いが止まりませんでした。
    起こさないように笑いをかみ殺しつつ、必死で写真を撮りましたよ。w

    返信削除