今回のコロナ禍にあたり、その経験から図書館の業務委託契約に関連して書いてみます(今日は2分半では読めない量です、すみません)。
【注】
- 委託元とは業務をお願いする側のことで、図書館やその親組織(大学や自治体等)を指します。この記事では判りやすくするために、「図書館側」と書きます。
- 委託元から業務を受ける側(=受託側)は、図書館業界では大手書店や某T社のような関連企業、あるいは一般の人材会社などが中心です。この記事では、「受託会社側」と書きます。
- 以下、図書館側から業務委託を見た場合を、例として書きます。
受託会社側の方がご覧になる際は逆のお立場から、指定管理関連の方であれば「業務委託契約書」を「協定書」(とは限りませんが)としてご理解頂いたりするなど、必要に応じ読み替えをお願いします。
★そもそも契約書があるはず
多くの図書館は、業務委託をしていることでしょう。図書の整理業務であったり、カウンター業務であったり、あるいは館内の警備や清掃もそうかもしれません。
そして業務委託の場合、仕様書(業務内容を説明する資料)に加えて、必ず契約書があります。
では皆さん、自館が締結した契約書を、ご覧になったことがあるでしょうか?
★電話は突然かかってくる
今回のコロナ禍により、受託会社側がこの先業務を進められるのか、心配ですよね?
いつ受託会社側から、「コロナ禍のために業務を行えません」と電話がかかってくるか、判りませんから。そのときになって慌てて契約書を取り出して・・・という事態は避けたいものです。
私が言いたいのは、そうなる前に一度契約書を読んでおきませんか、ということです(もちろん図書館側だけでなく、受託会社側の皆さんにも)。
★損害賠償請求?
本来民法では、約束した業務を行えないと、損害賠償請求の対象となり得ます。
では、コロナ禍で委託整理の納品が遅れた際、図書館側は受託会社側に対し損害賠償請求をするべき、という話になるのでしょうか?
結論から言えば、一般にこのような損害賠償請求は、考えにくいです。
天災・疫病など、どちらか/双方の責任でない「不可抗力」の事態により業務が遅れたり行えなかったりした場合、双方ともその責任を負わない、とする契約が一般的であるためです。
契約書にはよく、こんな風に書かれています。
第○条(不可抗力)
○○図書館および株式会社○○は、天災・戦争・疫病その他不可抗力により、業務が遅れたりできなかったりする場合、いずれもその責任を負わない。
○○図書館および株式会社○○は、天災・戦争・疫病その他不可抗力により、業務が遅れたりできなかったりする場合、いずれもその責任を負わない。
こうした条項が契約書に設けられていれば、「コロナ禍で委託整理の納期がずれ込む」と受託会社側から連絡があっても、無理に期限を厳守するよう求めたり、賠償を求めたりすることは難しいですよね(後述「補足」もご覧ください)。
なお、契約書にこうした不可抗力についての定めがないとしても、民法により同様の判断ができると考えられます。
(私的には、不可抗力の記載もない契約書には、不安を感じますが…)
★まとめ
結論としては、コロナ禍による委託業務については、遅延や不履行もやむを得ない、とみなされる可能性が高いです。
ゆえにその立場から、双方で善後策を検討する必要があります。
ただしこの場合も、書面で図書館側へ報告することになっていたり、業務停止を回避するための努力義務が設けられていたりするなど、契約書に条件が定められている可能性があります。
そのため、今回のコロナ禍による責任が双方に発生しない可能性が高いとしても、互いに契約内容を確認しておくべきなのです。
★もう一言(本当に言いたいこと)
今回は契約上の話について記載しましたが、実はそれよりも重要なことがあります。
それは、図書館員がこうした非常事態に際し、自ら考え自分のできることに取り組む、ということです。
ぶっちゃけそれは、今回書いた業務委託契約の話より、よほど大切です。
この記事を書いたのも、日頃多くの図書館員がタッチすることの少ない委託契約について、「誰かが受託会社側と話すんだろう」「上司が考えることだろう」ではなく、自分ごととして目を向けて欲しいと考えたからです。
「自分のできること」というのは、もちろん職務としての担当業務が、最優先でしょう。
ですが、それだけで終わってしまうのであれば、(業務を伴わない)自宅待機と言われたときは家でゴロゴロしていればいい、になってしまいます。
業務でなくても、やれることはあります。
「うめちゃん先生」こと梅澤貴典さんのように、コロナ禍で授業を受けられない学生さんたちのための資料(スライド/動画)を新たに作り、公開する方もいらっしゃいます(この力作、ぜひご覧ください!)。
彼にように現場を離れてすら、こうした素晴らしい取り組みができるのです。
業務であれ私的な活動であれ、どんなことでも構いません。
業務として電子リソースのアナウンスをすることでも、再開後に備えて段取りをするだけでも、いいでしょう。私的に他館のコロナ対応を参照して考えるだけでも、あるいは関連の文献等を読むだけでも、何かにつながります。
非常にささやかながら、私にとってはこの記事を書くことも、自分なりの取り組みです。このメッセージが、ほんの数人にでも届けば、記事を書いた意味が十二分にあると考えます。
繰り返しになりますが、私たち図書館員が自分で考え、専門職としてやれることにほんの少しでも取り組む、それが何より大切です。情報のプロフェッショナルとして、自分がやれることに取り組んでいきましょう!
★補足
- 契約については主旨を伝えることを重視し、できるだけ平易な表現にしました。そのため厳密には、正確性を欠いたり不十分だったりする記載があります。ゆえに何らかの判断をされる場合は、しかるべき資料の参照等をお願いします。
- 実際には、契約不履行をめぐる話は、シンプルとは言い切れません。例えば何をもってどの水準で「不可抗力」とするか、両者の見解が別れる可能性があります。おそらく図書館業界では、係争にまで発展することはほとんどないと思われますが・・・。
- 図書館における契約は、法人・大学や自治体など親組織の総務/法務部門が所管・締結することも多く、図書館やその長が契約当事者となっていないことも多々あります。
(その場合、契約書原本が図書館にない可能性も多分にあります)
- 図書館と受託会社は、お互いに重要なパートナーです。受託会社側に勤める図書館員も大勢いますし、双方を対立関係のように誤認させないよう留意して記事を書いたつもりです。決して受託会社やそこで働く皆さんを、単なる指示対象と捉えてはいませんことを、強調しておきます。
(私の気持ちを表すものとして、この記事もぜひご覧ください)
- ご所属やご身分などにより、契約書を直接見られないことも多々あるでしょう。それ自体は当然やむを得ないことと思います。
ここまでご覧くださればお判りと思いますが、この話の主眼は「契約書を読もう」ではなく、契約書を題材に「この非常時に、図書館員が自分のできることをやろう」とメッセージを送ることにあります。
ですので、契約書を読むことには拘らず、ご自分でできることを考えて頂ければ十分です。
●れいこと 【感謝とご報告】
最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
先日、きょーこの入学式がありました。
節目のこの日まで健やかに育ってくれたことが、本当にただ嬉しいです。私たち以上に、れいこがこの日を一番喜んでいるかもしれませんね。
ここまでれいこや井上家に寄り添い、きょーこを応援くださっていた皆さんには、感謝するばかりです。
そしてこの節目にとうとう、きょーこに、れいこがお星様になった話をしました。
今までずっと、「れいこ姉ちゃんは遠くで暮らしている」ということにしてきたのですが、小学校入学のときにちゃんと伝えよう、と決めていました。
まだ6歳のきょーこには、今ひとつピンと来なかったようで、それほどショックは受けなかった様子です。
でも、お星様になったれいこがずっと見守ってくれていること、れいこの分まで元気に育って欲しいことだけは、しっかり伝わったように思います。
さて、先日から書いてきたことですが。
当ブログやTwitter@fight_Reikoで、きょーこの写真を公開してきましたが、小学校入学を機に見合わせることにしました。
「れいこ お助け隊」や「れいこフレンズ」はじめ皆さんが、れいこと共にきょーこを応援してくださっていましたのでずっと写真を載せてきましたが、さすがにそろそろお年頃ですので。
(リアルに私と接点のある方は、facebookでぜひ、きょーこスマイルをご覧ください)
以上、改めての感謝と入学のご報告でした。
私たちに寄り添ってくださっている皆さん、これからもきょーこを温かく見守ってやってください。
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