私の職場でも、ささやかながら、クリスマスのお祝いです。
本当にささやかではありますが、それがウチらしくて、いい・・・と思っています。
さて、一昨日泣く泣く断念しましたが、今日はちゃんとレポートを。
17日に、京都図書館情報学学習会に参加してきました。
「図書館とアーカイブズの融合 -京都府立総合資料館のめざすもの-」
(発表: 京都府立総合資料館 福島 幸宏 氏)
講師の福島氏は、同館歴史資料課に在籍されており、公文書管理をなさっておいでです。いわゆる、アーキビストということになるのでしょう。
自治体史編纂や大学講師などの傍ら、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会等で各種委員をなさっています。
非常に広く活動なさっておいでの方ですので、ご関心があれば、GoogleでもCiNiiでも、検索してみてください。(笑)
その福島氏が、今日は図書館とアーカイブズの融合について、語ってくださいました。
まず最初に、「アーカイブズの世界」概観として、この世界のことをごくごく掻い摘んで、ご説明を頂きました。
- アーカイブズ機能には、組織アーカイブズと収集アーカイブズがある。
前者は、公文書・行政文書など、組織的に共有されているもの。京都府の場合、完結後25年を経過し、整理が済んだものから公開している。
後者は、地域資料・古文書など。家・団体などが持っていることが多く、博物資料の混入も多い。福島氏の実体験で、封を開けると、数百年前の髷(断髪したもの)が出てきたこともある。 - 戦災などにより、多くの資料が散逸する中、資料保存運動、自治体史編纂ブームが起こる(どうやら、私のイメージよりも、いろいろな資料を保存する動きがあるようだ)。しかし「平成の大合併」が一息つき、終息方向。
- 今年、いわゆる公文書管理法が成立。各機関は、これにどう向き合う?
公文書等の管理に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。 - 公文書館的機能=「親組織資料の継続的な引継ぎがシステム化されていること」+「情報公開制度と別の枠組みで、管理・公開されていること」、とのこと。
実質的に合格点にならない機関が多い、と氏は嘆かれていたが、それはどこの業界も一緒。
このさわりのお話をお聞きしただけで、この世界に対する全くの無知を自覚。
考えてみると、アーカイブズに関する資料は、図書館・アーカイブズとは何か(藤原書店)を、ざっと読んだくらいですし。
あ、それと「大学の図書館」28巻8号(2009年8月)で、福島氏が投稿されたのを、再度読み直してはきました。(笑)
続いて、「図書館のなかのアーカイブ資料-利用者としての経験から」として、各地図書館が有する、ユニークな資料の紹介がありました。
- A市立図書館の戦時資料
- B市立中央図書館にある個人文書・旧行政村資料
- C市立中央図書館の疎開資料
- D大学図書館の年史編纂関連資料
- E図書館の地域資料
これらが、例として説明されました。いずれも、レアな資料ばかり!
どうやら近世以前のものは、それなりに図書館でも管理されているようです。
一方で、近代以降-とりわけ、図書館資料として扱えないものが、うまく保存されていない現状があります。
福島氏はこうしたものを、本来行政・大学機能でしか果たせないものではないか、と指摘しました。
そして、「図書館の生き残り方/アーカイブズの広め方」について。
まずアーカイブズの現状として、圧倒的な不在(数え方にもよりますが、全国に50館程度らしいです)・味方の少なさがあります。そもそも、MLA連携(※)どころか、AA連携すらない、という現状のようです。
一方で図書館は、「図書館像の揺らぎ」があり、いささか足元が覚束ないのが実情です。
福島氏は以下の2つのアプローチで、両者が連携する意味合いを説きます。
- 地域資料の視点から、問題を再構成
地域社会・各団体(大学を含む)が課題を把握し、その中に業務を位置付けることの重要性、専門性 - 情報発信の主体としての強化型ライブラリ/アーカイブズ
(※)上述の「MLA連携」は、最近よく耳にするようになりましたね。MLAはそれぞれ、Museum、Library、Archivesを指し、比較的性格の近い3機関の連携を意味するようです。
そして最後に、氏は「新館にむけての私案」をお話くださいました。
(京都府立総合資料館には、新館を建てる構想があります。詳しくは、総合資料館基本構想をご覧頂くといいでしょう。素人すぎてよく判りませんが、いろいろと練られた計画であるように思います)
一言で言うと福島氏は、新館にて「京都」に関する情報を、一手に集中・発信したい、とのことです。氏によると、ポイントは以下の3点です。
- 唯一の<京都の記憶>のセーフティネット
京都に関する資料を蓄積=府民の財産を集中する、ということだそうです。これは、京都という場所がら、他の地域以上にやりやすいことでしょうし、やる必要性がありますね。 - 強化版アーカイブズ
巨大なニッチ産業として、NDL・京都大学・公共図書館が拾えない情報の収集を考えるべき、とのことでした。 - 府の事業としての耐性
この規模・方法でしか出来ないという独自性を訴えられること、そのモデル設計が重要、とのことでした。
ご自身はこの私案を、「妄想」とおっしゃっていましたが。(笑)
この「妄想」のうち、非常に重要に示唆に富んだご指摘が!アーカイブズの概念において、収集・整理については含まれているが、利用・情報発信についてほとんど考えられていない、とのことです。なるほど~!
その文脈においても、LとAが連携する意味合いがありそうですね!
私たちは、資料を収集することに加え、提供する面でもプロフェッショナル(・・・のはず)です。Aがそうした面で知識と経験をお持ちでないとしたら、Lの長年の蓄積が活かせるのではないでしょうか。
・・・ということで、今回の報告を終わります。
日頃なかなか馴染みのない・・・というか、全く勉強できていないテーマでしたので、すごく勉強になりました。
福島さんは、初学者にも判るように丁寧にお話くださったので、とても理解しやすかったです。質疑応答にもお答え頂き、感謝感謝です!改めて、お礼を申し上げます。
また、世話役をされた皆さんにも、いろいろとお世話になりました。突然当日の飛び込みにも関わらず、ウェルカムしてくださって、感謝しています。
特に、同館のF原さんや会場校・京都府立医科大学のY下さん、K原さんには、お世話になりました。ありがとうございました!
<今日の小ネタ>
- IT Pro「Googleが仏大手出版グループに敗訴、『Google Book Search』巡り」
Googleがブック検索で、敗訴。もしかすると、ブック検索では初の敗訴? - CNET Japan「グーグル、独自のAndroid携帯『Nexus One』を2010年投入か」
Googleから正式な製品仕様などが発表されていないものの、憶測が憶測を呼んでいる。早くも、iPhoneとの激突必至との噂。 - NIKKEI NET「ソニー、米で新聞・雑誌配信 ニューズと協力、電子書籍端末に」
Kindle対Readerの構図に拍車か。電子書籍市場、劇的変化の予感。
<どうでもいい独り言>
前回は、中途半端なエントリーで申し訳ありませんでした。今日はお詫びに、朝5時台に起きて、このブログを書いています。(笑)
今日は23日(祝)ですが、授業開催日のために、終日出勤です。
もうそろそろ、支度をしませんと・・・。
本当は、この日も学習会の前に行った、京都精華大学情報館や京都府立総合資料館のレポートもしたかったのですが、それはやむを得ず次回に。
ところで!
もしかすると、今回が今年の最終の更新になるかもしれません。
実は、まもなく海外に行ってきます!何をしに行くかは、以下の4択で。
- クリスマスの旅
ニューヨークでクリスマス満喫。子どもたちと本場のクリスマスを。 - 図書館の旅
ヨーロッパ各地の図書館を求め、放浪の旅へ。自転車で欧州を走破。 - 武道の旅
空手家として、最強の立ち技格闘技の一つ・ムエタイを観に。 - オーロラの旅
抽選で当たった北極ツアーで、オーロラを観に。ホッカイロ100個購入予定。
・・・後になるほど、嘘くさい。(笑)
もしかすると、これで今年最後になるかもしれませんので、ご挨拶。
皆さん、今年は本当にお世話になりました。私にとっては、図書館に復帰した記念すべき年になりました。
また、このブログを開設して、皆さんともお付き合いのできた一年でした。本当に、感謝でいっぱいです!また来年も、よろしくお願いいたします!
いささか気が早いですが、どうぞよいお年をお迎えください。