2014-07-06

(受講報告)
大学図書館職員長期研修@つくば(5日目)

先日よりご報告しています、大学図書館職員長期研修@つくば。
2週間に及ぶ研修もはや半分が終了し、今日は5日目、7月4日(金)のレポートです。過去のレポートは、こちらからご覧ください(予告初日2〜3日目4日目)。



★経営学入門1,2(筑波大学准教授・佐野享子氏)


「利用者のニーズにいかに対応するか」という投げかけのもと、マーケティングの視点から問題点・解決策を学びました。2コマ、午前中いっぱいをかけ、グループ討論を含めての講義でした。

解決すべき課題であるニーズと、そのニーズを満たすための手段である欲求について、マーケティングの基本を学びました。
私にとって、図書館サービスのために重要な概念であると思われたのは、以下の点です。

  • インタラクションによるサービス創造
  • セグメント(顧客層)ごとに異なるニーズへの対応
  • コストとそれを上回るベネフィット提供
  • 自発的な価値の交換

特に、「自発的な価値の交換」は重要なポイントに思えました。利用者は、時間・労力・感情を含め、コストをかけてサービスを求めます。そのコストを上回るベネフィットを提供し、自発的に「価値の交換」を求めるようなサービスをしていく必要があります。
特に大学の教員などにとっては、時間が最大のコストかもしれません。私はいつも「先生に無駄なことをさせない、先生の時間を節約しよう」と言っていますが、それを裏付けることができたようにも思えました。

また、「顧客満足度=知覚されたサービス/期待されたサービス」についても学びました。期待されたサービスを上回れば、「満足を超えた歓喜」によって利用者は「伝道師」になる、というものです。

図書館に理解を示すフレンドリーなユーザーをつくっていきたい、というのは多くの図書館の願いです。図書館の魅力を他のユーザーに伝えてくれる「伝道師」になってもらえるような、魅力的なサービスを提供できているか・・・自戒するところです。


★図書館建築と設備(跡見学園女子大学教授・植松貞夫氏)


図書館情報大学在籍時以来、ほぼ四半世紀ぶりに(笑)、植松先生のお話を伺いました。
先生は、大学図書館の建築に関する当面の課題を、以下の3点とされました。

  • 情報流通のデジタル化への対応
  • 資料保存スペース狭隘化
  • 来館者減少傾向への対策

その上で、多くの事例を写真で見ながら、先生が解説するスタイルで講義は行われました。世界中の様々な図書館の写真を、100枚ほども見せてもらいながら先生の解説を伺う、とても楽しい講義でした。

質疑応答の際に、「ラーコモ設置に見られるような大規模な図書館機能の転用が、将来起こる可能性がある。それに備え、対応する建築的な方法はあるのか?」と質問しました。
先生の回答は、「設計段階でどれだけ将来のことを考えられるかだ。例えば閲覧スペースも書架ゾーンとして転用する可能性があれば、床の強度を高めておくことができる。ただし、工費などとの兼ね合いがあるので、よくよく将来像を考えておかなければならない」とのことでした。

・・・ムム、極めてもっともなお返事。そうですよね、それしかないですよね。(苦笑)
植松先生、楽しくも貴重なお話を、ありがとうございました!


★研究者のアクセス手法1(東京大学教授・武田晴人氏)


経済史を専門とする講師から、研究者から見た情報へのアクセスについて、お話を頂きました。情報収集プロセスの事例や研究者の視点を、興味深く伺いました。

印象的だったのは、歴史を研修する方々にとって、デジタル化がいかに「イノベーション」であったか、という話です。
マイクロ資料では墨か朱かも区別ができないこともあったが、デジタル化で高精度のカラー画像を見られるようになった、これは本当に画期的だ、とのことでした。

日頃ついつい見失いがちですが、図書館が行っているサービスが研究者に重宝されていることを、忘れないようにしないといけませんね。



★その他、来年度の受講生用メモ


また、来年度の方へ向けたメモです。ご参考になれば。
  • 前半1週間が終わりましたが、講義時間外でやるレポート等は課されていません。17時以降は、自由時間と考えてよいようです。
  • ゆえに、研修中の土日は丸々スケジュールが空きます。時間の使い方を、考えておくといいでしょう。ちなみに今年は、私が言い出しっぺになって、東京の某大学図書館や個性派書店等の見学ツアーをします。
    (今年は私の知る限りではありますが、自分のこのプラン以外、みんなで行動しようという動きはありませんでした。他力本願だと、土日は退屈するかもしれません)

全くの余談ですが、私が敬愛する大先輩から、この「その他、来年度の受講生用メモ」がとても良い、とのお言葉を頂きました。
ほんのちょっとでも、次の方々の役に立てば・・・との思いですが、その気持ちを汲んでくださる方がいる、というのは嬉しいことですよね。ありがとうございました、M木さん!また頑張ります!

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