2014-07-30

(受講報告)
大学図書館職員長期研修@つくば(第9日)

すっかり遅くなってしまいましたが、連載していた大学図書館職員長期研修@つくばのレポート、第9日目です。


過去のレポートも、併せてご覧ください(予告初日2〜3日目4日目5日目週末編6日目7日目8日目)。


★学術情報コミュニケーションの動向(東北学院大学文学部 佐藤義則氏)


この演題・・・どんな話になるのだろうと思っていましたが、直接的な「学術コミュニケーション」のみならず、学術情報の動向に関して、広範にお聞かせくださいました。

一番印象に残ったのは、研究データに関するお話です。
公的資金を受けた研究成果の還元だけでなく、再現・検証性の側面、マッシュアップや大量データのマイニングなどの新たな研究への展開から、研究データを公開しようという動きが進んでいるそうです。

ヒトゲノム計画のように国際的なデータ共有プロジェクト、米国大学図書館での取り組み、OAでのデータジャーナルでの創刊といった事例の紹介がありました。
世界レベルでは、研究データの保存・管理・提供が進み、そこへ図書館が積極的に関与していこうという流れになりつつあるようでした。

翻って自分の国内の状況を見れば、まだ大学図書館でそうしたデータ管理・提供に関する議論は進んでいないように思います。今すぐ自館単独でできるものでもないでしょうし、まずはこうした動きに対してアンテナを張っておく、といったところになりそうです。

この件は、大学図書館に求められる機能が変わりつつあるという文脈において捉え、今後の課題としてはっきり認識しておくべきでしょう。


★消費者目線にたった顧客戦略(セブン-イレブン・ジャパン 高橋恭介氏)


セブンイレブンのゾーンマネジャである講師から、同社がいかに顧客のニーズを汲み取り、それに対応しているか、というお話を頂きました。

注目すべきは、綿密なデータ分析とそれにもとづくニーズ予測です。
例えば、高齢化率・女性の就業率の上昇をもとに、食卓に載せる食材を充実させているそうです。家事に割く時間が減少していることから、コメや麺ではなく、そのまま食べられるパンの充実を重点戦略としたりするそうです。

また、ネット市場の拡大にも、注目しているそうです。ネット市場はコンビニ市場をすでに上回っており、リアルとネットを融合させたオムニチャネルを重視しているとのことでした。
例えば、オンラインで本を注文後、セブンイレブンで受け取ることを契機に、顧客をリピーター化することを狙っているそうです。オンラインでの顧客をリアルな顧客に繋げることを、明確に戦略化されています。

質疑応答の際に、講師が図書館長であったらまず何をするか、という質問をしてみました。
すると、ユーザーの導線を調べ、導線上に関心を持ってもらえるものを配置する、とのことでした。セブンイレブンでは顧客の導線を非常に重要と捉えているそうで、図書館であってもその点は変わらないのではないか、とのことでした。

図書館とは違う世界で考えられていることは、非常に魅力的なヒントであると思いました。大学図書館では、大手企業のようなデータ分析は難しいですが、学べることは多々あると思いました。




★班別討議(発表)


2〜3日目の問題発見・解決演習で実習した手法を使い、大学図書館経営に関する実際的な課題を発見し、その解決案を作成しようというものです。
この討論・発表準備には、7~8日目の午後がまるごと充てられました。そして、この9日目の午後、全グループによる発表・意見交換が行われました。

私たちのグループでは、仮想の大学において図書館一般職有志による図書館上層部(館長・部長)への提案、といった仮定で討論を進めました。提案の骨子は、以下のとおりです。

  • 大学のミッションを実現するために、(図書館単独ではなく)大学全体としてアクティブ・ラーニングに取り組む必要がある
  • 大学図書館としては、ラーニング・コモンズの新設をもってそれに貢献する。大学全体でいろいろな取り組みをするうちの中核をなす企画とする

議論に際して注意したのは、この提案が図書館単独事業とならないように留意した点です。この長期研修で何人もの講師から言われた、図書館の活動は大学のミッションや目指すベクトルに即したものであることを、多分に意識しました。

その上で、先日の演習で学んだKJ法で検討事項を洗い出しながら、論点を整理していきました。舞台となる仮想大学について、大学のミッション・大学の現状・場所・学部構成・構成員人数など、細かい設定を行いました。

さらに、この提案の段階でどこまで考えるのか、今後どのように大学と交渉をするのか、大学図書館内でラーコモに関する検討を深めるとき誰がどのような立ち位置で行うのか、ラーコモによりどのような効果が期待できるのか。そうしたことを、一つずつ考えていきました。

2日間の午後を丸ごと使っての討論でしたから、それなりにいろいろと掘り下げることができました。6人でグループを組んだことで、違う視点からの発言を聞くことができ、その点も勉強になりました。

余談ながら。随所で国立大学さんと私学とは、違う文化なのだと感じることが多々ありました。どちらがいい悪いではありませんし、これが決定的に違う、とピンポイントで指定することもできませんが・・・やっぱり違いますね!(笑)

そしてこの日の午後、私たちを含め各グループが発表し、お互いに質疑応答・意見交換をしました。私たちの発表は至らないものでしたが、いろいろと勉強することができました。


★サプライズ閉講式


そして、思いがけない出来事が!
このとき近づいて来ていた大型台風の影響で、この長期研修は1日を残し、急遽終了することになってしまったのです!

本来であれば、最終日(10日目)に筑波大学附属図書館を見学などがあり、その後閉講式となる予定でした。ですがこの台風に伴う措置により、この日(9日目)の夕方に急遽閉講式を行いました。

とても充実した研修だけに、1日早く終わるのはとても残念だったのですが・・・天候には勝てません。泣く泣く閉講式を行い、修了証を頂きました。




予告も併せて10回も続けてきたこの長期研修レポート、次回はいよいよ最終回、総括編です。全体を通じて感じたこと、思ったこと、皆さんへの感謝の気持ちなどを記したいと思います。


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