2016-01-21

図書館員の皆さん、ORCIDはご存じですか?

1月から更新が滞りがちな、このブログ。
すべては自分の怠慢によるものですが、正月に掲げた今年の抱負も、どうなるやら。




★ORCIDの勉強会に行ってきました


さて、本題です。
年末ですが、ORCID(=オーキッド)の勉強会に参加してきましたので、今さらながらレポートしておきます。

(ORCIDはひと言で言えば、世界中の研究者に一意のIDを与えることを目的に非営利団体・プロジェクトです)

勉強会の講師は、ORCIDのRegional Director, Asia Pacificの宮入暢子さんでした。ORCIDの中の方から、その役割や目指すところを伺い、ようやくその重要性や意義を理解することができました。

結論としてお伝えしたいことは、以下の2点です。
  • ORCID、素晴らしい!これは日本でも普及させるべき。
  • 普及させるために、大学図書館が前向きになることも大切。まず誰かに声をかけるところからでもいいので、何かアクションを。

以下、この記事は、主にORCIDをご存じない大学図書館員を主な対象に、情報提供と呼びかけをするものです。



★ORCIDに関する情報源


皆さん、ORCIDのことは、どれくらいご存じでしょうか?
恥ずかしながら私はこれまで、「世界共通の研究者IDやろ?」くらいにしか思っていませんでした。きっと多くの皆さんも、そういった認識ではないでしょうか。

ですがORCIDは、単なるID付与に留まりません。
複数のシステム間をつなぐ、非常に機能的なシステムです。海外では相当普及しつつあり、日本の学術界でも普及させるべきものだと思います。
(そもそも学術の世界において、日本だけが使用しないという選択肢があるわけもないと思いますが)

ORCIDについて知りたい方は、以下のリンク先がおススメです。





★ORCIDの特長


ORCIDについて私なりに特長をまとめれば、以下のようになるでしょうか。

  • 研究者の特定
    研究者個々にIDを付与し、個人を識別できる。
    日本人の場合、アルファベット化・イニシャル化されることで、識別が非常に困難になる。例えば、ノーベル賞受賞の田中耕一氏を「K.Tanaka」で表記する結果、多数の同じ表記の人物と識別することが非常に困難に。同じ表記の人が同じ大学・学部にいると識別は困難を極めるが、実例は少なくない。
    (アジア人に査読依頼が少ないのは、個人特定が困難なことが一因とされる)

  • 研究者主導、自身が情報コントロール可能
    自身がユーザー登録し、プロフィールの公開範囲やどこへリンクを許可するか、自由に決定できる。さらに、研究者の登録は無料。

  • 他の識別子/システムとのリンクによる相互運用性
    主要出版社の論文投稿システムには、ORCIDと紐づいているものが多い。論文投稿の際自分の論文・査読実績等を自動取得したり、各システムからORCID登録したりすることもできる。ORCID IDでログインできるため、複数のID・パスワードを使い分ける必要もなくなる。
    論文データベースにも、ORCID IDは多く収録されている。例えば、Web of Scienceでは500万レコードに対し、DOIで識別した論文にORCID IDを表示する。

  • 海外での普及実績・デファクトスタンダード化
    すでに180万人の研究者が、ORCIDに登録している。Springer Nature社や英国王立協会、PLOSのように組織をあげてORCIDの活用に取り組んだり、イタリアのように国として登録を促進する事例も増えてきた。

  • 熟考されたシステム/操作性
    • 所属大学等により各項目に対してデータを付与できるため、身分証明や個別の研究に証明を出すこともできる。
    • 代理入力者を指定することで、例えば共同研究者などが研究実績を入力できる。
    • 新規論文が完成した際、研究者はメールを受け取りOKするだけで、ORCIDのレコードに研究業績を反映させられる。
    ・・・などなど。

思い付くままに書きましたが、我ながらちっとも巧くまとめられていません。(苦笑)
勉強会でデモを見ながらお話を聞いたときは、「おお〜、これはスゴい!」と思ったのに・・・。

このブログを読むよりも、現役ライブラリアンのブログなら@Keita Bandoささくれを読んでもらった方が、きっと役立つような。




★雑感


最後に、その他もろもろ。

  • ORCIDは素晴らしいプロジェクトだが、日本は本当に後発・・・というか、まだまだ未着手。技術的な課題ではなく、組織として積極的に取り組むかどうか、という姿勢の問題か。宮入さんによれば、「日本は蚊帳の外」。
    近い将来、海外のプロジェクトや論文投稿などでORCID登録が必須になったとき、慌てることがほぼ確実(一部では、ORCID登録はもうすでにマストの様子)。

    (2016.1.22追記)上記の「蚊帳の外」について、講師の宮入さんから以下のコメントを頂きましたので、掲載します。

    これはORCID側が日本を「蚊帳の外」と思っているわけではなく、むしろその逆です。日本以外でかなり盛り上がっているCrossrefによる自動アップデートにしても、出版社によるORCID義務化にしても、日本ではあまりニュースになっていません。「海外で進んでいる研究者識別子の話」として、自分の仕事には関係ない、と思っている方が多いようです。また、ご指摘のとおり、日本の大学では図書館よりもURAの方がORCID対応するべき、という声はよく聞くのですが、そのような学内協議をしているうちにも事態は進んでいて、すでに3,000誌以上のオンラインジャーナルでORCIDの入力が可能で、ORCIDアンケート調査では4割以上の研究者が「いちばん最近の論文投稿でORCIDを提示した」と言っています。ORCIDについて身近なサポートが受けられずに困るのは研究者の方々であり、ORCIDとは何か、どう役に立つのか、(部署ではなく)大学としてどう対応すべきなのか、という議論が進むことを願っています。

    文脈を伝え切れていませんでしたね。ご覧になった方に誤認させていましたら、申し訳ありません。宮入さん、コメントをありがとうございました。


  • 図書館界の中だけにいても、こうした素晴らしいプロジェクトを活用・支援できない(そもそも、大半のライブラリアンがまだORCIDの存在すら知らない?)。
    ライブラリアンはこうした試みにアンテナを張っておき、外部と連携し、学術界に貢献する意識が必要。例えば上記の香港浸会大学は、図書館がORCID相談窓口を設け、大学の中心になってORCID導入を推進したとのこと。

  • とは言え日本の大学では、図書館よりも研究推進部のような部署がメインになって推進する方が現実的とも思える。とりあえず私も、この勉強会の後すぐに、勤務先の研究推進部に情報提供してきた。

  • 日本で普及させるためには、科研費申請システムでORCID登録へのリンクボタンを設け、(任意でいいので)ORCID IDの取得を推奨するのが一番手っ取り早いように思えるが・・・?

とりあえずライブラリアンの皆さん、まずはORCIDのことを知り、誰かに伝えるところから始めてみませんか?
まず今日(そのうち、ではなく!)、「ねえねえ、ORCIDって知ってる?」と図書館の同僚や研究推進部の人に声をかけるところから、スタートしてみましょう!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

今回はなかなかの寒波でしたね。東日本の方々は、かなり大変だったご様子でしたが、大丈夫でしょうか?

雪が積もると、いつもれいこのことを思い出します。
闘病が始まってから初めて帰省したとき、実家で雪が積もりました。左足が麻痺し始めているのにも関わらず、なぜか「武器を探してくる」と雪の中へ一人で散歩に行ってしまった、れいこ。(笑)


楽しいエピソードですが、雪を見るとれいこのことを切なく思い出します。


今回、きょーこに雪を見せてやりました。
きょーこと雪の楽しい思い出が、これから何回も何回も重なっていきますように!


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