★政策文書/関連資料をまとめてみた
とは言え、私も主だった政策文書類にサッと目を通してはいますが、個々のポイントまでほとんど覚えていられません。ことあるごとに、どこに何が書かれているか、調べ直す羽目に…。
そこで自分のためにも、主だった政策文書や関連資料類を30件に絞り、時系列にまとめメモを付けてみました。
ご関心のある皆さん、よかったら参考になさってください。
特に若手の皆さん、各資料にはリンクを貼っておきますので、ストライクなものだけでも、ぜひ一度本文をご覧ください。
★このまとめについて
大学図書館や学術情報のあり方を考える上で、大学図書館員が読んでおくといいと思える資料を、【主観で】選びました。
2010-2020年に刊行されたものから、選んでいます(拾えていない重要な資料もあるはず)。
官公庁や関連組織による政策文書を中心にはしましたが、上記趣旨に合致しそうな関連資料を、いろいろ入れてあります。外国語文献は、日本語訳を掲載しました。
(いわゆる図書・雑誌記事や、実務者向けのハンドブック・ガイド類は、原則除外しました)「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」、「研究力向上計画2019」、「統合イノベーション戦略2020」のように大学運営に関わる重要資料であっても、大学図書館についての言及が少ない/無い資料は、よほど重要でない限りは除外しました。
(大学職員としては、こうした資料も当然読んでおくべきではあります。特に科学技術政策をめぐる文書には、大学の研究や予算、人材等に直結するものが多数あります)
資料のタイトル・リンク・発行元・発行年に加え、簡単なメモを付けています。メモは私が雑感や憶測を記しただけですので、その程度のものとしてご覧ください。
「何から読んだらいいか、分からない!」という若手のため、特にお勧めしたい5件について、タイトルの前に「★」を付けておきます。
これは自分が周りの若手に薦めたい、という程度のチョイスです。当然ながら、それぞれの知識やお立場により、読むべき文献は変わります。誤りや文献の漏れ、ポイントの読み落としなど、ご指摘頂くべき点は多数あろうかと思います。何かありましたら karatekalibrarian@gmail.com 宛に、ご教示頂けますと幸いです。
★政策文書/関連資料まとめ(2010-2020)
- 学術誌問題の解決に向けて ―「包括的学術誌コンソーシアム」の創設―
日本学術会議 科学者委員会 学術誌問題検討分科会(2010年8月)
単なる購読費問題にとどまらず、学術雑誌問題の根本から議論。学者、学術団体、図書館などにより、学術情報受発信諸問題に対応する「包括的学術誌コンソーシアム」設置を提案。
J-STAGE等への機能統合についても言及。2021年の現状に、一定の影響を与えたと思われる。
私的には、「大学に、学術情報流通専門家養成コースを含むダブルメジャーコース」を新設する提案に関心。
- ★大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる大学図書館像-
科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(2010年12月)
電子化の進展やそれに伴う学術情報流通の変化を背景に、「学習支援及び教育活動への直接の関与」など、新しい「大学図書館の機能・役割及び戦略的な位置付け」を提示。
加えて「大学図書館職員の育成・確保」として、学習・教育・研究支援のための専門性・育成・キャリアパスの重要性に言及。
- 大学図書館にとって2010年代で最重要、かつ最も影響を与えたであろう文書。一方、ここに示された内容のうち多くは、現在も課題のまま残されている。
- ★図書館職員の人事政策課題について(提言)
国立大学図書館協会人材委員会(2012年3月)
上記協会が、「大学図書館の発展と協働の立場から人材の確保と養成に関して国立大学図書館が学内であるいは図書館が共同して取り組むべき事柄とその方向性を提示した」もの。
国立大学を対象としているが、特に「図書館活動正解のアピールと戦略的な取り組み」、「図書系専門能力の評価のあり方、専門職員としての処遇の検討」などは、2021年現在の私学にも共通する。
この提言が、どのように吸い上げられ成果を得たのか(あるいは得なかったのか)、詳しい方、ご教示ください!
- 学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について
科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(2012年7月)
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第4期科学技術基本計画や上記文書にもとづき、さらなるオープンアクセスや学術情報発信の強化に向けて検討。
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「知的情報の蓄積・発信は(略)大学等の責務であり、その重要な手段として機関リポジトリを位置づけ」、「NIIが提供する共用リポジトリの積極的な展開、機関リポジトリのソフトウェアの高度化・機能標準化」との記載。JAIRO Cloudを念頭に、リポジトリ推進の国策化か。
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競争的資金の成果のオープンアクセス化、NII, NDLなどの連携の必要性など、関連提案多数。
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- 新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて ~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)
中央教育審議会(2012年8月)
学部教育を中心に、大学教育のあり方を抜本的に見直した答申。高等教育政策の一大転換を答申。
内容は多岐にわたるが、大学図書館にとってはアクティブ・ラーニングの推進、学修支援環境の整備が直結。
この質的転換により、中教審の構想「知識を基盤とした 自立、協働、創造モデル」を実現する意図か。
- 研究評価に関するサンフランシスコ宣言
米国細胞生物学会 年次会議において採択(2012年12月)
米国細胞生物学会年次会議にて、研究(者)に対する評価のあり方や指標について採択された宣言。同分野に留まらない普遍的内容。
「研究論文の質をはかる代替方法として、インパクトファクターのような雑誌ベースの数量的指標を用いないこと」を明文化。
転じて研究評価には、「出版物に加えて(データセットやソフトウェアを含む)研究のすべての成果の価値とインパクトを検討すること」を勧告。
- 東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(建議)
科学技術・学術審議会(2013年1月)
東日本大震災後に際し、科学技術・学術が社会の期待に応えられなかったとされたことから、「国民との信頼関係を再構築」し、かつ「課題解決のための研究開発システムに改革していくための審議」をまとめた資料。
審議にあたり、「社会のための、社会の中の科学技術」、「国際連携、自然科学と人文・社会科学との連携の促進」など、今に通じる重要な考え方を明示した点を高く評価。
コロナ禍や日本学術会議任命拒否で社会が揺れる今、「政府が適切な科学的助言を迅速に得るための仕組みを整備すべき」、「政府は、科学的助言者の活動に政治的介入を加えてはならない」、「科学的助言と相反する決定を行う場合にはその根拠の説明が必要」といった記載に改めて注目。
- 学位規則(およびその改正の省令等)
文部科学省(2013年3月公布・4月施行)
2013年の同規則改正により、「博士の学位を授与された者は、博士論文を印刷公表することとされているところ、印刷公表に代えて、インターネットを利用して公表する」ことに。
学術情報流通における初のオープンアクセス義務化政策との指摘も。この改正は、リポジトリ普及の面でも大きな貢献をしたと言えよう。
博論をリポジトリ登録する根拠として、担当者なら一度は読んでおくべき。
- オープンデータ憲章
G8ロック・アーン・サミットにて合意(2013年6月)
各国政府の持つデータをオープンなものにしよう、というG8の合意。図書館に関する直接的な言及なし。
主要国家間で多くのデータを公共財として位置づけ、オープンにしていく方向性の合意が取れたことの意義は、極めて大きい。こうした動向が(政府データに限らず)近年のオープンデータや標準化の流れを強く後押ししていることは間違いなく、その意義だけでも図書館員は知っておくべき憲章。
直前に開催されたG8科学大臣会合の共同声明において、論文や研究データのオープン化について言及されたことにも留意。
- 学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)
科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会(2013年8月)
前述の「質的転換」にもとづき、アクティブ・ラーニングを支援するため、「コンテンツ」・「学習空間」・「人的支援」の3要素の連携が必要と明示。
大学図書館には、電子コンテンツの拡大を含めた蔵書の充実、保存書庫の設置、シェアード・プリント、アクティブ・ラーニングのための空間整備などを求めた。
また、ラーコモは「図書館を中心に設けるのが適切」と明示され、設置経費の補助と併せて、国家的なラーコモ推進政策となったものか。「専門職は教員と図書館員との協力 の過程を通じて、図書館員の中から育成されるようなシステムを構築」(概要版)という記載に、特に留意。
- データ引用原則の共同宣言(「Joint Declaration of Data Citation Principles」和訳)
FORCE11、日本語訳は研究データ利活用協議会 リサーチデータサイテーション小委員会(2014年、日本語版は2020年1月)
「公正で再現可能な研究の基盤は、頑健でアクセス可能なデータ」、「データは正当かつ引用可能な研究成果」といったことを明示。2014年の時点で、ここまでの宣言を纏め上げたことに驚き。
重要性、クレジットと帰属、永続性などの8項目を列挙。人間が理解できるのみならず、機械が使用できる引用方法を念頭に提示。
現在の研究データをめぐる議論のベースが、すでにこの時点で提示されている。
- 大学等におけるジャーナル環境の整備と我が国のジャーナルの発信力強化の在り方について
ジャーナル問題に関する検討会(2014年8月)
問題意識として、「学術情報資源として重要な役割を担うジャーナルを長期にわたってどのように維持及び発展させていくかを主体的な問題として本質的に考え直す時期」と設定。
価格上昇対応もあり、海外に過度に依存しないことや日本からの発信強化への方策として、J-STAGEを強化推進する意図か。
私的には、「ジャーナル問題に関する検討会」を立ち上げ検討した経緯が謎。前述「学術情報の国際発信…」を学術審議会で2年前に出した後でもあるのに、ほとんど別メンバーの検討会で同じジャーナル問題を議論した意図は?
(2年経っているので議論はおかしくないが、不自然な印象も?)
- 教育研究の革新的な機能強化とイノベーション創出のための学術情報基盤整備について-クラウド時代の学術情報ネットワークの在り方-(審議まとめ)
科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会(2014年8月)
アカデミッククラウドの必要性について言及。教育・研究のみならず、大学共通の管理運営基盤としてのあり方を提案。
SINETの整備・増強により、コンテンツの流通環境整備を促進することに言及。メタデータ整備によるコンテンツ間の連携、JAIRO Cloudの普及などが取り上げられている。
学認を共通仕様として展開することを検討するよう提案。
- 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン
文部科学大臣決定(2014年8月)
大学における研究不正/研究倫理への考え方を、根底から変えたガイドライン。図書館への直接的な言及はないものの、学術情報生産現場のあり方に関わるものだけに、「概要」だけは大学職員として必読。
従来、研究者個人の責任とされてきた不正行為を、大学が責任を持って不正行為の防止に関わると明示した点が、最大のポイント。図書館も、学部教育などを通じ、研究倫理向上に寄与することが不可欠に。
当ガイドラインについて、日本学術会議が「審議」した「回答『科学研究における健全性の向上について』」も推奨したい。
- FAIR原則(「THE FAIR DATA PRINCIPLES」和訳)
FORCE11、日本語訳はJSTバイオサイエンスデータベースセンター(Original Draft版は2014年9月、日本語版は2020年2月)
データ公開の適切な実施方法を表現したものとして、国際的に認知された原則。オープンサイエンスを推進する上で、最も重要な概念を指し示すもの。
「FAIR」とは、「Findable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる)」の略。
「(メタ)データが、グローバルに一意で永続的な識別子(ID)を有すること」等、15の原則が定められている。
- 学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)
科学技術・学術審議会 学術分科会(2015年1月)
日本の学術研究における諸課題を洗い出し、今後に向けて議論の方向性を示した資料。「国と学術界双方の資源配分における戦略不足がこの問題の根底に」あることなどに強い危機感を持ち、各界に具体的な改善を求めている。
いささか総花的な印象は拭えないが、第5期科学技術基本計画の内容や一連の科研費改革など、この後に続く諸政策に影響を及ぼした重要な報告。
「挑戦性、総合性、融合性、国際性が脆弱」との認識に立ち、学術政策・大学政策・科学技術政策の連携や若手人材育成などを基本的な考え方として掲げた点は評価されよう。
- ★我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について~サイエンスの新たな飛躍の時代の幕開け~
国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会 (2015年3月)
「オープンサイエンスに係る世界的議論の動向を的確に把握した上で、我が国としての基本姿勢を明らかにするとともに、(略)講ずべき施策等を検討するため」に立ち上げられた同会の検討結果。
オープンサイエンスの重要性を確認し、その推進の必要性や方向性など、日本におけるオープンサイエンス戦略の基礎や今後の検討課題をまとめた資料。
ここでの議論が、この後の「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会」や「第5期科学技術基本計画」へと繋がった。論文だけでなく研究データ等を含め公的研究資金の成果を「原則公開」することや、研究実施機関が具体的施策を講ずることなどを、日本における「基本姿勢」と明示した。
-
ラーニング・コモンズの在り方に関する提言
国立大学図書館協会 教育学習支援検討特別委員会 実践事例普遍化小委員会(2015年3月)
上記小委員会が「学習支援に係る先行大学における実践事例の調査とその普遍化のための検討」を行い作成した「ラーニング・コモンズ(LC)の在り方(共通理解のために)」を核に、文献紹介やチェックリストなどを加えた資料。
LCが単なる空間提供に留まらず、「学生の学士力を養成することに一歩踏み込むことが必要」と強調。「大学図書館の整備について(審議のまとめ)」のエッセンスの一つか。
「人的サービスの先にある教育目的を踏まえて,図書館(員)の学生支援を制度化することにより大学における図書館のミッションを再定義し,これに伴い図書館職員の専門性についても教育との関連から見直しを行うべき」という指摘に留意。
- 高等教育のための情報リテラシー基準 2015年版
国立大学図書館協会 教育学習支援検討特別委員会(2015年3月)
「高等教育の様々な場面で活用されることを期待して、情報リテラシーを身につけた学習者のあるべき情報活用行動プロセスを基準として」示したもの。図書館情報学の理論的枠組みを、主体的な学習者育成の実践に応用することを目指した点が特長か。
近年国内では、情報リテラシーについて具体的指標のようなものが設けられておらず、重要な意義を持つと言えよう。
やや切り口が異なるが、同分野の資料として「情報リテラシー教育のガイドライン 2015年版」(私立大学情報教育協会)も参照されたい。
- わが国におけるデータシェアリングのあり方に関する提言
科学技術振興機構(JST) 科学技術情報委員会(2015年4月)
わが国の科学技術情報基盤のあり方について、科学技術イノベーションへの貢献の観点から議論する場として設置された同委員会によるもの。「データシェアリングに関連する議論を活性化を促し、研究者のデータ共有意識を高めていくため」の提言。
5つの提言のうち、「データシェアリングポリシーを早急に策定すべき」が最重要か。ポリシーには、「研究データ収集基準」、「研究データシェアリング範囲の設定」、「データ品質保証方法」、「データ格納手法」などを規定するよう求めている。
- 第5期科学技術基本計画
総合科学技術・イノベーション会議、閣議決定(2016年1月)
科学技術基本計画は、科学技術基本法にもとづき政府が策定する、10年先を見通した5年間の科学技術の振興に関する総合的な計画。第5期は、2016-2020年度が対象。
「イノベーションの創出につながるオープンサイエンスの世界的な流れに適切に対応する」ことなどを通じ、「総論文数を増やしつつ、我が国の総論文数に占める被引用回数トップ10%論文数の割合が第5期基本計画期間中に10%となること」を目標として設定。
オープンサイエンスに見られるように、前掲の政策文書類での議論が、そのまま取り入れられている点も多い。政策文書類が基本計画を通じ、国策となっていく点、図書館員には留意して欲しい。
- 学術情報のオープン化の推進について(審議まとめ)
科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会(2016年2月)
前年の「我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について」や、同審議会「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」など過去の議論を受け、議論を深化。
「研究データ等を利活用することによる研究の加速化や効率化を図ること、及び研究のエビデンスとなるデータを保存・公開することの意義とそのための具体的方策を示すことを意図」したもの。
研究データ等の公開を求めるのみならず、プラットフォーム整備や人材育成、散逸の防止、各ステークホルダーの役割、利用促進など、広範で具体的な議論が特長。
- つくばコミュニケ
G7茨城・つくば科学技術大臣会合における共同声明(2016年5月)
同会合での生産物で、「オープンサイエンスを分野横断的課題と位置づけ」等の重要な記載が多々あり。
とりわけ声明の6項目の一つとして、オープンサイエンスが取り上げられたことは特筆すべき。同年の「第5期科学技術基本計画」などもあり、一気にオープンサイエンスの認知度が高まった印象。
「オープンサイエンスに関する作業部会を設置」だとか「国際的な協調や連携を推進して、デジタルネットワークの整備、人材の確保など、適切な技術やインフラを整備する」などとあるが、それが以降のどの活動を指すのか不明(どなたか教えてください)。
- 国立大学図書館機能の強化と革新に向けて ~国立大学図書館協会ビジョン2020~
国立大学図書館協会(2016年6月)
「知のあり方が大きく変わりつつある」ことを背景に、「国立大学図書館機能の強化と革新に向けて」基本理念を定めたもの。加えてその実現のため、「3つの重点領域とそれぞれにおける戦略的な目標を設定」。
国立大学図書館の総意として、紙媒体を中心としたスキーマからの脱却や新たな価値観への取り組みを、声高らかに宣言したことの意義は非常に大きいと言える。
私立大学図書館員にこそ、これを読んで考えて欲しい。国立大学とはそもそもの立ち位置からして異なるが、これをどう受け止めるかに、(大袈裟に言うなら)私学の未来がかかっている。
- ★我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性
デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会(2017年4月)
「関係省庁等連絡会及び実務者協議会での検討を踏まえ、我が国におけるデジタルアーカイブの構築とその利活用促進に関する実務的課題に対する推進の方向性を示すもの」。事務局は「内閣府知的財産戦略推進事務局」で、国の政策としても本丸。
デジタルアーカイブの重要性・必要性を、社会的に確たるものにした文書。コンテンツだけでなく、メタデータなども含めた総体としてデジタルアーカイブを扱っている点が重要。
「重要なのは、保有するメタデータやデジタルコンテンツ等の情報資源を、適切な利用者が活用できるように準備された状態をつくること」とした上で、「つなぎ役」としてのジャパンサーチの立ち位置を明確にした。
- これからの学術情報システムに向けて ―現状・課題・当面の方向性に関するレポート―
国立大学図書館協会 学術情報システム委員会(2018年6月)
同委員会が、学術情報システム全体を俯瞰する「見取り図」として位置づけ、「今後の方向性および具体的なアクションプランの策定を今後進める予定」ためのベースとして作成した資料。
「統合的検索システムと利用者インターフェース」、「電子リソースとメタデータ」等、7項に整理され、現状・課題・方向性について議論。
本資料に書かれた状況を「改善するための具体的なアクションプランを検討するため」、1年後に「解決策の試案」として出された「これからの学術情報システムに向けてII ―アクションプラン検討のための試案に関するレポート―」も併せて参照すべき。
- 購読モデルからOA出版モデルへの転換をめざして ~JUSTICEのOA2020ロードマップ~
JUSTICE(大学図書館コンソーシアム連合)(2019年3月)
JUSTICEが電子ジャーナルの価格高騰に対し、「新たな契約モデルの検討を進める以外に現状の打開策はないとの認識から」策定したロードマップおよびその説明。
OA2020のような極端な転換を目指すのではなく、「OA 出版モデル実現までの移行期を乗り越える道筋を明らかにすること」を目的としたもの。まずは情報収集・調査から着実に行い、日本における現実的な対応を模索するこのロードマップを、高く評価したい。
とは言え、OA出版モデルへの転換が簡単ではないことは明らか。各会員館による積極的な関与が重要になろう。
- 3か年総括報告書 我が国が目指すデジタルアーカイブ社会の実現に向けて
デジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会(2020年8月)
2017年9月のデジタルアーカイブジャパン推進委員会で合意した範囲・事項について、同委員会が進めてきたその3年間の議論・成果を取りまとめたもの。「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」に端を発するこの分野の動向の総括。
デジタルアーカイブの構築・活用は、「文化の保存・継承・発展だけでなく、コンテンツの二次的利用や国内外への情報発信の基盤」と位置づけ、ジャパンサーチを「国レベルでの知的インフラ」として整備してきた経緯が伺える。
「つなぎ役」となる連携機関の増加やその支援、人材育成が、今後の最大の課題か。
- ★学術情報流通の大変革時代に向けた学術情報環境の再構築と国際競争力強化
日本学術会議 第三部理工系学協会の活動と学術情報に関する分科会(2020年9月)
近年の同会議による提言の総括的なもの。学術情報流通における課題を提示した上で、今後の方策について、主に組織やシステムのあり方の面から提言。
電子ジャーナル・管理法人、ジャーナル出版サービス提供法人、ハゲタカジャーナル対応のコンソーシアム、学術情報リポジトリ管理法人、学術法人といった多くの提案を列挙。
学術情報をめぐる俯瞰的観点からなされた、非常に重要な議論。他方、これだけの提案を実現するのは相当に難しい印象。
- ★「コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について(提言)」
科学技術・学術審議会 学術分科会・情報委員会(2020年9月)
「学術研究・情報科学研究が社会の負託に応えられるよう」との視点から、今後の方策について検討したもの。「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(建議)」を色濃く受け継いだ印象。
大学図書館についても、デジタル・アーカイブ化の推進など、具体的言及が多い。一部の大学図書館が閉鎖となった場合に近隣の図書館がバックアップする仕組みなどを、中長期的に検討すべきとの記載もあり。
上記に加え、絶版等資料の図書館での利用に関する著作権法への措置や、プレプリントサーバなどについても触れた上で、「多様な学術情報資源の共有等により、大学図書館が相互に連携したデジタル・ライブラリーとなるよう」求めた。
★補足
繰り返しになりますが、このリストは主観によって選択され書かれたものですので、その前提でご覧ください。
掲載資料の取捨選択やメモの内容について、品質はもとより一貫性・網羅性・客観性など、何ら担保されていない(!)ことを明記しておきます。
また、多くの方はご存じかと思いますが、官公庁などの出す政策文書類の多くには、数ページにまとめられた概要版や要旨等が出されます。
本体はたいてい軽く数十ページはありますから、骨子を知りたいだけなら、概要版等がオススメです。
(このリストには、私自身が概要版しか読んでいないものも、若干含まれています。スミマセン…)
★最後に
この記事を書くのは、大変でした。
今までの記事の中で、間違いなく一番時間をかけて書きました。コロナが広がった2020年春から少しずつ整理して書いてきましたので、50…、いや100時間は費やしました。
ここに挙げた資料はほぼ一度は読んでいたものでしたが、読み直したり資料間の前後関係をみたりメモを書いたりすることが、予想以上に大変でした。
ある資料を読む中で初めて存在を知った資料もありましたし、書いている最中に公開された新たな資料は、当然一から目を通さなければいけませんでした。
それなりに大変だったのですが、以前別記事に書いたように、「図書館員が自分で考え、専門職としてやれることにほんの少しでも取り組む」こととして、コロナ禍の中で自分なりに取り組みました。
着手からアップまで1年以上かかってしまいましたが、参考になれば幸いです。
ここに追加しておくべき情報がありましたら、ぜひSNSにでも「○○は載せるべきやろ!」とでも書いて流してみてください。時間と心の余裕があれば、そのうち追加・改訂するかもしれません。
もし他の方の参考にでもなりそうなら、「空手家、よう頑張った!」とでも添えて、ツイート/シェア頂ければ幸いです。周知頂いた結果、図書館に関わる方々の研鑚材料にでもなれば、この上ない喜びです。
いつか図書館員の研鑽がもっともっと行われるようになり、「空手家のやつ、全く無駄なページを作りやがって!こんなん、誰でも当然目を通しとるわ」と笑われる日を、心待ちにしています!
最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
れいこが星になって、まもなく9年です。
私たちの心の傷は癒えないままですが、はや10年近くが経とうとしているのですね…。
きょーこがいなければ、どうなっていたことか、とよく思います。
一昨年まで毎年開催してきた「れいこパーティー!」ですが、今年もコロナ禍のため、開催できないかもしれません。
追ってこのブログやTwitter@fight_Reikoでご案内差し上げますので、ぜひご確認ください。
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