2014-07-17

(受講報告)
大学図書館職員長期研修@つくば(第8日)

先日よりレポートしています、大学図書館職員長期研修@つくば。
今回は8日目、7月9日(水)のレポートです。


なお、これまでの受講レポートは、こちらからご覧ください(予告初日2〜3日目4日目5日目週末編6日目7日目)。



★利用者の情報行動(筑波大学教授 逸村裕氏)


授業開始前に、先生から受講生にアンケートがありました。
自分の大学の学生数、授業出席率、閲覧座席数、一人当たりの年間貸出冊数、大学の自慢できるところ、図書館に協力的な教員が何人いるか、といった設問に何も見ずに答える、というものです。

予想できると思いますが、受講生の大半が、これらの質問の多くに答えることができませんでした。いかに自分が自館の、そして自分のいる大学のことを把握できていないのか、ということを理解させられました。
(この進め方は、実に逸村先生らしい、しかも有効な方法だと思いました。いきなりガツンとやってから始まるパターンですね)

お話はかなり多岐に渡りましたので、特に印象的な数点だけ紹介します。
  • 「教育進行基本計画」のような政策文書的なものは、読んでおくこと。こういうものを利用しないと。これらを根拠にすれば、大学執行部も基本的にYesと言うしかない。
  • 利用者には「図書館不安」(Library Anxiety)がある。図書館は大きくどこに何があるか分からない、使い方が複雑、声をかけにくい・・・一度ダメだと思うと、次はもう使わない、ということを理解するべき。
  • PCメールも満足に書けない学生が多い。ある調査では、毎日PCを使う学生は4%。レジュメ・教科書・ノートだけで勉強できる、という学生も一定数いる。こうした層にどう向き合うのか。
  • 図書館は何ができるのか?何をしなければいけないのか?それは、世界中のライブラリアンの共通認識であろう。一緒に考えていこう。
  • 取り組みは3勝7敗でいい、少しずつやれることを。図書館ユーザーが1,000人いたら、いきなり1,000人をどうこうしようとせず、まず100人のファンをつくろう。
最後の2つは、図書館情報学の研究者からのアドバイスと言うよりも、元・ライブラリアンの先輩からのメッセージだったのかもしれません。

質疑応答では、2つの点について伺いました。
Q1. 学生ニーズを汲み取るというお話があったが、職員は教員ほど学生と接する機会がない。何かアドバイスを。
A. ビブリオバトルでもポスターセッションでも企画し、接点をつくればいい。教員にも働きかけ、話をするべき。

Q2. (個性派書店B&Bでは、ビールを飲みながら本を選べることを引き合いに)利用者自身気づいていないニーズを汲み取るには?
A. 話やすい学生と、とことん話してみることだ。サポートし、信頼を得ながら話を重ねれば、いろいろと分かるはず。

逸村先生、貴重なお話をありがとうございました!アドバイスを含めて、いろいろと示唆に満ちたお話でした。


★国立情報学研究所の戦略(国立情報学研究所 学術基盤推進部次長 尾城孝一氏)


コンテンツ事業を中心に、国立情報学研究所(以下、「NII」)のやっていること、考えていることについて、説明がありました。講師は知る人ぞ知る尾城さんですので、背景的な部分や歴史的なものもよくお分かりで、興味深いお話を伺うことができました。

NIIは1976年に発足した東京大学図書館学研究センターを母体とし、現在のミッションは「研究と事業とを車の両輪として、情報学による未来価値を創成」することだそうです(まずこれを認識しておくと、理解がしやすいかも)。

以下、お話の中で印象的だった部分です。
  • NIIはCiNii Articles, CiNii Books, JAIRO, KAKENなど様々な学術コンテンツを提供しているが、学術コンテンツ課は10人あまりしかいない。大学図書館の協力が不可欠ということ。
  • CiNiiの新しい機能(?)を今年度から開発中。とある分野のポータル的なものを目指す。(コレ書いていいのかどうか分からないので曖昧に・・・オフレコ指定はなかったが?)
  • ある調査では、大学としてのオープンアクセスポリシーを持っていると回答した機関はなかった。OA誌を含む学術リソースの確保と研究発信をどう位置づけるのかが、大学の大きな課題である。
  • NIIがいろいろなサービスを提供することが、大学図書館の思考停止につながっていないか?商用DBならいいが大学共同利用機関である以上、平等な立場でお互いのリソースを持ち寄り、連携・協力が必要。
  • NIIは、大学図書館員の活動の場(プラットフォーム)も提供したい。情報と課題の共有、共同事業、人材育成のインキュベータ。

いつものごとく、質問もしてきました。

Q. 科学技術基本計画など政策文書を踏まえてNIIは意思決定していると思うが、詳しく聞きたい。
A. おっしゃる通り、政策文書に沿って戦略を決定している。だがそれらはネットの整備等、ハードがメイン。コンテンツの話などは出にくく、政策へ届くよう、図書館で声をあげて欲しい。妥当な予算も得て、図書館とともに新しいサービスをつくりたい。

NIIと大学図書館が対等のパートナーであり一緒に未来をつくる仲間である、という話は、正直あまり考えていませんでした(違う考えを持っていたのではないですが、考えてなかった、というのが実情です)。今日のお話を受けて、NIIとはパートナーシップを持って一緒に頑張っていきたいと思いました。
尾城さん、貴重なお話をありがとうございました!


★班別討議(2日目)


前回も書きましたが、2〜3日目の問題発見・解決演習で実習した手法を使い、大学図書館経営に関する実際的な課題を発見し、その解決案を作成するものです。
指定のグループに分かれ、2日間の午後をまるまる使って検討しました。これについては9日目に発表の場がありましたので、そのときにレポートしたいと思います。



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