2016-03-30

図書館の研究支援って、文献を提供するって意味だけじゃないわいね?
(第2回KEIO大学図書館国際フォーラムで考えたこと)

昨日は、私のバースデーでした。
facebookにバースデーを登録しているので、ここ数年はスゴい数のお祝いメッセージを頂くようになりました。まるで芸能人のような気分ですが、スゴいのは私じゃなくてfacebook。(笑)




★KEIO大学図書館国際フォーラム


さて先月、慶應義塾大学で開催された第2回KEIO大学図書館国際フォーラム「研究支援と図書館 ~研究サイクルを取り巻く『混沌』に図書館はどう向き合うか~」に参加してきました。

開催主旨にもありますように、研究成果の質と量がランキング等の大学の評価に直結するようになりました。加えて、一つの切り口に過ぎない大学ランキングが一人歩きし、大学の評価そのものに置き換わっているかのようにすら見える、そんなこともしばしばです。

そうしたことを背景に、大学図書館には研究力強化への積極的な支援・貢献が求められるようになってきたと言えるでしょう。
大学図書館が従来の文献提供に留まらない支援をするとしたら、どういったことを模索するべきなのか・・・いろいろと考えさせられました。

いまだに自分の結論めいたものは出ていませんが、私にとって非常に重要な機会になりましたので、今さらながら雑感を記しておきます。




★研究支援をめぐるあれこれ


以下、印象的だったことや考えたことを、思い付くままに。まず当日の資料をご覧頂く方が、理解しやすいかもしれません。

  • 今後大学図書館に求められる研究支援とは、従来の文献提供とは全く異なるものである、ということを改めて実感。研究支援は、直接的には従来のサービスの延長線上にはないカテゴリーと見なすべき。

  • 研究支援とはこういうもの、という確立された概念はできあがっていない。各大学図書館が、大学本部(特に研究支援部)と連携しながら、自分の大学では何をすべきか模索していくしかなさそう。
    (15年くらい前に、手探りで「電子図書館」なるものを模索していた、あんな感じ??)

  • 講師・マルパス氏は講演を、(1)大学上層部から見た図書館の価値、(2)国際的な研究管理、(3)研究管理における大学図書館の役割、といった3点で組み立てた。
    (1)は大学図書館員が忘れがちな視点、(2)は見落としがちな視点だが、(1)(2)があってこその(3)であることを忘れないようにしたい。例えばオープンサイエンスといった概念も突然現れるのではなく、大学中枢を含めた幅広い議論が、徐々に形になったものであるはず。
    その観点から、「図書館は必要とされるところに、【事前に】位置しておくべき」という氏の指摘は、非常に重要。

  • Web上で分散されがちな研究業績やプロフィールデータを、どう管理するかは大きな課題。
    宮入氏から発言があったように、これにはグローバルな識別子管理が重要で、とりわけORCIDは最も現実的で有力な対策の一つ。図書館は、大学でのORCID導入に積極的になるべき。
    (参考)前回、宮入氏の講演を伺ったときのレポート

  • 論文だけでなく、そのデータ、図表、画像、ポスター、スライドといった関連リソースを網羅的に収集・提供できるよう、図書館は貢献できる、というマルパス氏の指摘。
    確かに、こうしたリソースの体系的収集・提供は、今後さらに重要になるはず。「学術情報のオープン化の推進について」で記されているように、「既にNIIが提供している共用リポジトリサービスを強化し、研究データ公開リポジトリとして整備すること」が一つの解決策か。

  • 研究者を巻き込むには、賛同できる理念だけでなく、インセンティブを用意することが必須。ポストするとDOIが付与され、それがまたORCIDに紐づいて自身に関する様々な情報を一元化できる、といった仕掛けが必要か。

  • 研究支援の可能性を考えるのにあたっては、当日コーディネーターをなさった市古みどり氏が書かれた「大学図書館による研究支援の可能性」に大きなヒントがありそう。
    私も知財本部の経験から、市古氏の言う研究支援の文脈について、考えるところ大。当日の氏の指摘のうち、URAはじめ大学の各構成員とライブラリアンとの役割分担については、さらに議論を深めたい。

  • 研究支援は、研究者の本丸に踏み込むもの。軽々しく「研究支援します!」と言うべきではない。どういった研究支援が必要なのかできるのか、まずはしっかりと館内/大学で議論すべき。
    それには、研究支援部との連携やそこでキャリアを積んだライブラリアンの存在も欠かせないはず。




★模索


研究支援として大学で何をやっていけばいいのか。具体化できていないこの研修支援というアプローチを、どんな風に大学図書館/大学に持ち込んで議論にしたらいいのか、私自身まだよく判りません。

ですが今回のフォーラムがきっかけで、こうしたことを考えることができるようになりました。まだもやもやはしていますが、考えるきっかけをもらった貴重なフォーラムでした。
講師のマルパスさん・宮入さん、市古さんはじめ慶應義塾大学の皆さん、本当にありがとうございました!

それにしても、こういう話はどんな感じで館内/大学でコンセンサスを創っていくんでしょうねえ・・・?学んだことをいつも、大学内であまり共有できていないよなあ、自分・・・。




★(併せてご報告)『ささえあう図書館』-TSUTAYA図書館からは見えてこないもの 岡本真さん×鎌倉幸子さん×猪谷千香さんトークイベント


全くの偶然なのですが、KEIO大学図書館国際フォーラムに上京したところ当日夜に標記イベントがあり、参加してきました。
先日刊行された「ささえあう図書館」を軸にこれからの図書館のあり方を議論するもので、会場は大入り満員、盛況となりました。


参加者の多くは(図書館員ではない)一般の方々で、そうした場での討論は非常に意義深いものだったと思います。この日のアツい討論で、お三方の思いが市民の皆さんに届いたことと思います。
(私は念願かなって猪谷さんのお話を初めてお聞きしたのですが、その情熱ぶりに圧倒されました!)

最後に岡本さんが参加者に向けて、「『図書館リテラシー』、この言葉だけ覚えて帰って欲しい」という話が、とても印象的でした。
これらの様子は、当日のツイートまとめからご覧になれます。


余談ながら。
この本には、エル・ライブラリーの谷合館長が書かれた章「支え合う社会をめざして」も掲載されています(「れいこちゃん記念文庫」や私も登場)。

瀬戸内市立図書館の「全国津々浦々 図書館員の本棚 数珠つなぎ」でも、この本を紹介させてもらいましたので、よろしければそちらもご覧ください。



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

きょーこは、アンパンマンが大好きです。毎日毎日、とにかくアンパンマン。(笑)
そんなきょーこを連れて、先日アンパンマンミュージアムに行って来ました。きょーこはもう、大興奮!







いまだに毎日のように、「きょーちゃん、アンパンマンのおうち、行ったで〜」と言っています。これだけ喜んでくれると、連れて行った私たちも大満足。(笑)

これからもずっと、きょーこが笑顔でいられますように。
きょーこ、れいこ姉ちゃんがお前のことを、いつも見守ってくれよるけんな!


2016-03-13

瀬戸内市立図書館「全国津々浦々 図書館員の本棚 数珠つなぎ」に寄稿しました

温度差のある日が続きますが、皆さん体調はいかがでしょうか?
私は体調不良が数日続き、仕事を休んだり早退したり(同僚の皆さま、スミマセン)・・・。花粉も飛びまくっていますし、健康管理に気を付けましょう!




★瀬戸内市立図書館「全国津々浦々 図書館員の本棚 数珠つなぎ」


さて、今日は簡単なご報告だけ。
今年瀬戸内市にオープンする瀬戸内市立図書館のことは、ライブラリアンの皆さんでしたら、よくご存じでしょう。私も同館のS田・開設準備室長に常々敬服している一人で、オープンをとても楽しみにしています。

その同館のWebサイトに、「全国津々浦々 図書館員の本棚 数珠つなぎ」というページがあります。これはその名のとおり、全国のライブラリアンが次々とおススメの本を3冊ずつ紹介するページです。




★私も寄稿


先日、そのコーナーへの掲載を私も依頼頂き、拙文を寄稿しました。早速アップ頂きましたので、よろしければこちらをぜひご覧ください。


ここで私がご紹介したのは、以下の3冊です。(図書館員にではなく、)市民の皆さんにぜひ読んで欲しい、と思うものばかりです。
  • 『ささえあう図書館:「社会装置」としての新たなモデルと役割』青柳英治/編著 岡本真/監修 2016年
  • 『“ひとり出版社”という働きかた』西山雅子/著 河出書房新社 2015年
  • 『原発利権を追う』朝日新聞特別報道部/著 朝日新聞出版 2014年

図書館に関するものでご紹介したいものは山ほどありましたが、図書館分野を1冊に留めるため、泣く泣くご紹介を見送りました・・・。(涙)

皆さん、よろしければ、ぜひご一読ください!
ご感想などがありましたら、ぜひソーシャルメディアに書いてください。そのご感想が、まもなくオープンする同館のPRになりますので、ぜひ!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
春は、れいこのことを思い出す時季です。最後の春、れいこは半身の麻痺が出ていたものの、まだ多少動けていました。

3月に小学校で社会見学に行ったときには、嬉しさのあまり車椅子を降りて自分で歩いたそうで、気持ちが病気を克服するのではないかと期待を抱いたものです。


春は、れいこが元気だった最後のシーズン。
私たち一家にとっては、辛い季節です。

きょーこが元気に育ち、寂しいけれどそれ以上に楽しい、そんな時季にいつかして欲しいと願っています。

2016-03-10

NDLレファ協フォーラム開催!
(「夜明けの図書館」の埜納タオさんも登壇!)

このところ、このブログの「いいね!」ボタンが何故か不調です。
「いいね!」を押しても、その後の「確認」ボタンを押さないと「いいね!」されなかったり、しばらくカウントされず後でポンと「いいね!」の数が増えたり・・・。


前回の記事「ありがとう、100万アクセス!(図書館活動とれいこを応援くださった皆さんへの感謝)」も、記念すべき記事なのに、そのせいかわずか2「いいね!」・・・。



★NDLレファ協フォーラムについて


さて、図書館員なら、NDL(国立国会図書館)さんのレファレンス協同データベース(通称・レファ協)はご存じでしょう。同館では、レファ協の普及を目的として、毎年レファ協フォーラムを開催しています。

私は今年度からレファレンス協同データベース企画協力員を拝命しており、先日の第12回レファ協フォーラムの運営側でした。開催からしばらく経ってしまいましたが、簡単に振り返りをしておきたいと思います。




★開催主旨・プログラム等


開催主旨・プログラム等については、レファ協公式サイトをご覧ください。当日の配布資料も公開しています。

今回のフォーラムの魅力は、大きく2点です。
  • 「夜明けの図書館」作者の埜納(ののう)タオさんをお招きし、基調講演をお願いしたこと。
  • レファ協やレファレンスの現場をよく知る方のパネルディスカッションを行い、レファ協やレファレンスのこれまでとこれからについて、フロアを交えて議論頂いたこと。




★埜納タオさん基調講演


タオさんの基調講演、とても良かったです!
今回のフォーラムの開催にあたり、企画協力員の会議では「明るく楽しく、前向きなフォーラムにしよう」と話をしていました。タオさんのお話は、まさにその狙いにピッタリでした。

「夜明けの図書館」の話をメインに据えつつも、外から見た図書館やレファレンスのこと、地元図書館の活動事例などについて話を聞かせてくださいました。
レファ協に対しても、「国民の誰もが、信頼・活用できるデータベースに」、「これを今登録すれば、10年後20年後に役立つかもしれない」といったメッセージをくださいました。

さらに途中からは、レファ協の立ち上げ時に大きな役割を果たされたNDL・兼松芳之さんとの対談形式で、とても和やかな雰囲気の中、お話を聞かせてくださいました。

お話の最後に、「図書館の魅力・司書職の必要性を伝えていくと共に、心に沁みて優しい気持ちになれる物語を創っていきたい」と結ばれると、会場からは大きな拍手が送られました。タオさん、魅力的なお話をありがとうございました!


ちなみに5月には、「夜明けの図書館」第4巻が発売されるそうですので、皆さんぜひご一読ください。


ところで私、ちゃんと本を持参してタオさんのサインを頂きました!
同じことを考えていた方も多く、情報交換会では、多くの参加者さんが本を持ってタオさんのもとへ。タオさん、ゆっくりする間もなくてすみませんでした。

ちなみに当日のことは、タオさんのブログでもご紹介頂いていますので、そちらもぜひ。


★事業報告


事務局より、レファ協事業の報告がありました。
参加館が700館近く、累積データが16万件超、月間アクセス240万件といったデータの他、担当者研修会といった事業、Twitter@crd_tweetでの発信、国立国会図書館長からの礼状送付や企画協力員賞などについて報告されました。

(データ登録が一定水準に達した図書館には、国立国会図書館長からの礼状が送られることは、意外に知られていないようですね。ドーンセンターさんのように、しっかりとアピールに使われるといいのではないでしょうか)

レファ協の中でも特に、9,000件にもなった調べ方マニュアルが圧巻ですね。
プロのライブラリアンが作成した、質担保された調査マニュアルが1万件近くも!NDLさんはもとより、参加館みんなが誇っていい、世界にも希有なデータベースではないでしょうか。



★パネルディスカッション


最後に、「レファ協の10年:これまでとこれから」と題して、パネルディスカッションが行われました。
以下、討論の中で印象的だった部分をご紹介します(討論が非常に幅広かったため、体系的にご紹介できず、申し訳ありません)。

  • (宮川氏)レファレンス・サービスの認知度は、まだまだ低い。福井県立図書館では、レファレンス・サービスを知らしめるための手段として、レファ協を活用したり、覚え違いタイトル集を創ったりした。
  • (木下氏)組織の中で、レファレンス・サービスをどう位置づけるか。組織内外へのPRといった視点も必要。
  • (兼松氏)つながり、たのしみ、ひろがり。レファ協のエッセンス。
  • (宮川氏)レファ協の醍醐味は、小規模図書館にこそメリットが大きい点。初期投資不要、統計機能、参加間の協力。それから「情報というのは発信しているところに集まる」こと。
  • (齊藤先生)レファ協の強みである出展明示を、これからも大切に。レファ協のデータの積み重ねは、後世に世相等を調べる材料にもなるだろう。
  • (フロアから)レファレンス事例間のリンクを考えてもいいのでは。→(井上私見)関連質問をサジェストする機能があれば面白そう。


議論は広がり、あっという間に時間が過ぎました。レファ協について、レファレンスについて、いろいろと考えることのできた一日でした。

小田コーディネーターから、「結論を出してから歩くのではなく、歩きながら考えるのがレファ協」と総括してくださいましたが、きっとこれからも、そうでしょうね。
この膨大なデータをどう活用していくかは、私たちライブラリアンが考えるべきことなのでしょう。

タオさん、コーディネーターの皆さん、ご参加くださった皆さん、そして事務局の皆さん、ありがとうございました!

なお、当日の様子は、ツイートのまとめからもご覧になれます。こちらも、ぜひ。



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
最近きょーこは、少しずつお姉ちゃんの存在を知ってきたようです。先日も、お花を買って帰るときに、「お姉ちゃんのん?」と言っていました。


きょーこもいつか、れいこお姉ちゃんのことを知る日が来るのですね。
そのときには、私たちがいかにれいこを愛していたか、そしてその分まできょーこのことを愛しているのか、しっかりと伝えてやろうと思います。

2016-03-03

ありがとう、100万アクセス!
(図書館活動とれいこを応援くださった皆さんへの感謝)

まずは、お礼から。
このブログの累積アクセス数が、100万に到達しました。皆さん、ありがとうございます!


大勢の方にご覧頂くことができて、本当に嬉しいです。
ブログを開設したときは、1日30アクセスされるページを目標にしていました。それから7年間、当初予想もしなかったほど多くのアクセスを頂きました。

ここ数年は、名刺交換のときに「空手の人ですよね?ブログ読んでます!」などと言って頂くことがしばしばです。
アカデミックなことは欠けませんが、ライブラリアンの皆さんにシンプルで重要なメッセージをお送りできているとしたら、嬉しいことです。


また、お目にかかったことのない方々を含め、日本中、ときには海外からも多くの方々が、このブログを通じてれいこの闘病を応援くださいました。

闘病中に寄せられた数え切れないほどのメールやメッセージ、ツイート、ときにはれいこへのプレゼントまで、本当に私たち一家の支えになりました。皆さん、ありがとうございました。


おかげ様できょーこは健やかに育っており、2歳7ヶ月になりました。
成長の様子は、れいこの闘病記Twitterアカウント@fight_Reikoでもツイートしていますので、よろしければ、そちらもぜひ。
応援くださった皆さんへの感謝を込め、きょーこの成長も発信していきたいと思っています。



至らない図書館員、そして至らない父親ですが、これからも図書館と育児に頑張ります。皆さん、改めてよろしくお願いします!押忍!