2020-02-18

図書館員よ、出版の危機を知っているか?

大げさな見出しですが、実は2年前に書いた文章のタイトルです。今回、その記事を公開します。

イメージ画像:夕焼け



★危機はいまだに


公開するのは、私が所属する大学図書館問題研究会の会報「大学の図書館」に巻頭言として書いた、短いコラムです(2018年4月 vol.37 no.4 p.43)。

2年経ち、出版の危機もさりながら、図書館員の関心の低さもより深刻になった…と感じており、この記事をブログに転載することにしました。
(1ページだけの記事で、CiNii Articlesの収録対象にもなっていないこともあって)

数字は多少変わっていると思いますが、危機的な状況は変わりませんので、ぜひご一読ください。

■図書館員よ、出版の危機を知っているか?

 「1兆3,701億円」と聞いて、何の数字かお分かりだろうか。
 これは、2017年の紙の出版物の推定販売金額である(書籍・雑誌合計)。前年比6.9%減で13年連続マイナスであり、ピークの1996年のほぼ半分という危機的水準に達している。
 出版市場の縮小は、各方面へ直接的な影響を及ぼしている。版元は「良書」を出す体力を奪われ、取次は物流を含めて立ち行かなくなりつつあり、個人経営の「まちの本屋さん」はもはや絶滅寸前である。
 電子書籍は一定の伸びを見せているものの、既存の出版・流通システムは崩壊の危機に直面している。言ってみれば、本を作って売ったり買ったりすることが、(少なくとも今のようには)できなくなりつつあるのだ。

 さて、同じ本の世界に住む図書館員は、この状況をどれほど理解しているだろうか。
 残念ながら、多くの図書館員は出版市場規模すら知らないのが現実であろう。厳しい言い方をすれば、知らないのではなく、知ろうとすらしていない。
 図書館員は総じて、出版に対しあまりに無関心だ。図書や雑誌がどこかで勝手に生産され、放っておいても図書館へどんどん運び込まれる、そう考えているかのようだ。
 一部の例外を除き、図書館にとって紙媒体の資料はいまだなお、最重要のコンテンツである。
 であれば、私たちはこの出版の危機に対し、関心を持つべきではないだろうか。天候不順の年に、野菜の出荷量に関心を持たない八百屋がいるだろうか。

 生協による同年の調査によれば、1日の読書時間がゼロと回答した大学生は、実に53.1%にも上った。もはや、紙の資料を読む学生は、少数派なのだ。出版市場の危機は、こうした教育・研究の変容とも直結しているのだろう。
 学生が本を読まない、図書館を利用しないと嘆く前に、まずは図書館をも包み込む出版・流通の世界に目を向けてみてはどうだろうか。

以上、ご参考にでもなれば幸いです。


★併せてお誘い


併せて、主に関西の大学図書館関係者の皆さんに、お誘いです。
この大学図書館問題研究会では、関西3地域グループがコラボし、以下のとおり合同例会を開催します。どなたでも歓迎ですので、ぜひご参加ください。

★「ALPS履修証明プログラム受講体験談を通して考える、大学図書館員のこれからの学び」

【主催】
大学図書館問題研究会 関西3地域グループ(京都・大阪・兵庫)
【日時】
2020年4月18日(土)14:00-16:00(遅刻・早退でも歓迎!)
【場所】 【参加資格】
図書館に関心のある方なら、どなたでも。会員/非会員不問。
【詳細】
お申込み等詳細は、専用サイトをご覧ください。


年に1度の合同例会ですから、きっと有意義な学びと交流の場になると思います。有志懇親会もありますので、ぜひお気軽に!

今回は、私が所属する兵庫地域グループが、メインで企画・運営を担っています。ですので、ぜひこのブログ記事をシェア頂き、空手家を喜ばせてください!(笑)



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

先日は、きょーこの保育園の生活発表会でした。
来春から小学生になるきょーこには、最後の発表会でした。


れいこが通った保育園、そして、れいこが頑張った生活発表会。
そんな場で、今こうしてきょーこの成長を目の当たりにし、感無量です。

5年余り通った保育園での日々が思い起こされ、卒園が近いことが嬉しいような寂しいような。(笑)

きょーこ、元気に育ってくれて、ありがとう!元気に小学生のお姉ちゃんになるんやで~!

2020-02-11

図書館員の「当たり前」を、人に伝えよう!

先日のご案内どおり、インフォ・スペシャリスト交流会(通称:IS Forum)にて、講演の機会を頂きました。今日はそのご報告と、改めて考えたことを。

イメージ:冬の小道



★IS Forumのご報告


至らない講師でしたが、何とか大役を終えることができました。
タイトルが「変わりゆく学術情報流通 ー電子ジャーナル、オープンアクセス、リポジトリ、そしてオープンサイエンスー」と壮大で、どこまで出来たかは心許ないですが。(笑)

開催趣旨等は、先の記事先方のサイトをご覧ください。スライドは、こちら。


参加された皆さんは、図書館員だけでなく知財の実務家や研究者に教員と、こちらがお話を伺いたいような方々でした。

学術情報についても詳しい方ばかりで、例えば電子ジャーナルや科研費、査読、オープンアクセスといった事項そのものの説明は、皆さんとやり取りし割愛できました。

特筆したいのは、質疑応答の充実でしょうか。そうした方々でしたので、多様な見解や鋭いご指摘を多く頂き、私にとっても非常に楽しい時間でした。
ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました!


★意外に役立った?


そんな皆さんでしたから、私の話はさぞ退屈…と思いきや、案外そうでもなかったようです。

講演では、それぞれのご専門外の部分が出てきて、初耳の内容も多かったそうです。皆さんが学術情報流通の変容や課題をイメージするのに、私の話も幾分か役立ったようです。

開催趣旨どおり、今回の私の話は比較的基礎的でした。
ある程度研鑽を重ねている大学図書館員であれば知っていておかしくない、言わば「当たり前」の話をしただけです。
(もちろん私も、勉強し直したり入念に整理したりして、準備は怠っていませんが)

そんな私の話が、どうして役立ったのでしょうか?


★自分の「当たり前」を、人に伝えよう


改めて考えるに、こちらが当たり前と思っている話でも皆さんにとってはそうでなく、学術情報流通の全体像を知る手がかりになったのかな、と思えました。

ご参加くださった皆さんは、各論については私以上に詳しい方々でした。
それが私の話により、背景や経緯を理解したり、ご存じだった各ピースがつながったり隙間が埋まったりして、全体像が鮮明になったのかもしれません。

当日の様子


自分にとっての当たり前は、他の人にとっての当たり前とは限りません。むしろ、きわめて重要な情報である可能性もあります。
例えば研究者にとって、電子ジャーナルは毎日使っているものであっても、ビッグ・ディールや破綻しつつある購読モデルなどをご存じない可能性は大です。

大学図書館員が当たり前と思っている学術情報流通に関する知識は、教員や研究支援部門、あるいは事務職員にとって非常に貴重なものかもしれません。

これは、大学図書館員に限りません。館種によらず、図書館員は情報のプロフェッショナルであるはずです。
自分たちが当たり前と思っている知識や情報について改めて考え、必要に応じコミュニティや社会にそれを伝えていくことも、大切なことだと考えます。

ライブラリアンの皆さん、ぜひ「当たり前」の話を、他の皆さんにしてみませんか?


【宣伝】
今回の講演内容は、ぜひ公共/学校図書館の方々など、大学図書館員以外の方々に知って欲しいです。機会を与えて頂けるのであれば、個人的にでも他の形ででも、話をしますのでぜひ聞いてください。

なお、こうした活動はひとえに私のビジョン・ミッションにもとづくものですので、機会を頂けるのでしたら、謝金はなくて構いませんこと、申し添えます。




●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

主が星になって以来、7年半も手を付けられなかった、れいこの部屋。
最近とうとう、妻が整理を始めました。


妻も辛かったと思いますが、心を鬼にして頑張ってくれました。
私もれいこの作品の束を運び出したとき、思わず涙がポロリと流れました。


れいこ、ごめんな。
お前のことを、忘れる訳じゃないけんな。

お前のことを、今までもこれからも、世界で一番愛しとるけんな!