2015-11-21

行ってきました、第17回図書館総合展!

今年も、図書館総合展に行ってきました。
少し遅くなりましたが、今日はそのレポートです。

図書館総合展の魅力については、先日の案内図書館総合展の参加心得3ヶ条、過去の参加レポート(2014年2013年2012年)などで述べてきたとおりです。




★出会い語り合う場


一義的に言えば、図書館総合展は多くの図書館員や関係者が集まり、新しい知識を習得したり情報を交換する場所なのでしょう。
ですが私は、それ以上に人と人が出会う場所、交流を深め未来を語り合う場としての意義を強調したいと思います。

パシフィコ横浜での図書館総合展には、今年は35,000人近くの入場者があったそうです(今年も過去最高を更新)。
もちろん、これほどの規模のイベントは、図書館界には存在しません。これだけ多くの人が集い語り合う意義については、説明する間でもないでしょう。



先日の案内にも書きました多くの自主企画を含め、ここにはとても多くの出会いがあります。

私も今年、70人以上の方々と新たな出会いがありました。きっと中には、後で振り返ることになる重要な出会いも含まれているでしょう。

私は今年9つのフォーラムに出ましたが、一番の収穫は知識ではなく仲間です。
仲間たちと語り合った時間こそが、私たちを高め合い、これからの図書館界をつくる原動力になると信じています。



★充実のフォーラム


図書館総合展と言えば、豊富なフォーラムがその魅力の一つです。私は9つのフォーラムに参加しましたので、ひと言ずつ。

  • アクティブ・ラーニング最前線(主催・図書館総合展運営委員会)
    「これから、アクティブ・ラーニングの実効性を問われるはず。その中で、現代の大学図書館の意義は?」という逸村先生による投げかけ。学生の声も含めて、アクティブ・ラーニングをどう評価するか、図書館として大学として考える必要あり。

  • こんなに使える!社史の魅力~社員教育、営業、就職活動、レファレンスツールまで、社史の活用・魅力を事例紹介をまじえてご紹介~ (主催・図書館総合展運営委員会)
    日本の社史の多様性や、統計などを含めた充実ぶりを学んだ。レファレンス等に活用していきたい。勤務先の学院史も読んでみようかな、という気にさせられた。

  • 大学の国際化と図書館の国際化 その取組と課題(主催・シュプリンガー・ジャパン株式会社)
    図書館の国際化を議論する前に、まずは大学の国際化をどうするのか議論するのが先、という気が。今のサービスや書類を英語に置き換えることが、国際化ではないはず。
    アクティブラーニングとか国際化だとか、大きな方向性は間違えていないが、こうもみんなが一斉にそればっかり志向してることに、ある種の危惧。

  • オープンサイエンス時代の研究情報データベース(主催・トムソン・ロイター)
    アカデミックな池内さんと、現場で鍛えた梅澤さんの講師コンビが、それぞれとても良かった。池内さんの研究データの話は、知らなかったことばかり。うめちゃん先生の「図書館利用教育から、情報活用教育へ」は、全国の図書館員に聞かせたい。

  • “ILL”の需要と供給(主催・図書館総合展運営委員会)
    ILLに関する様々な話。現状把握には役立ったが、豪華パネリスト5人に対して90分のフォーラムでは時間が足りなかった。それぞれの話をもっと聞きたかったし、逆に議論の時間ももっと必要だった。
    私的には、サンメディアの松下茂社長に基調講演を頂くフォーラムを開催すると面白いのでは、とも。

  • 大学図書館の現実的な未来像(主催・丸善株式会社 株式会社雄松堂書店)
    東京大学さんの新図書館計画の話を中心に、あれこれ。30以上ある部局のライブラリアンが若手を中心に集まり、検討を進めたのは、国立大学の一つのモデルケースか。
    他方、制度的にそれを担保していないことへのリスクも。将来に渡って、この連携を続けられるか。

  • 図書館員のためのファシリテーション実践講座(主催・図書館パートナーズ)
    ご存じトサケン主宰・仁上さんと、図書館パートナーズによる講座。フロアでワークショップ的なものをするなど、参加者にとってはハードルが低く、元気の出るフォーラムに(今年はトサケン・フォーラムがなくて残念)。

  • 障害者差別解消法と図書館(主催・図書館総合展運営委員会)
    兵庫県三田市での事例を中心に、ハンディを持ったユーザーに対し、電子書籍が提供し得る様々な可能性について議論。図書館と出版社が協力し、電子書籍のコンテンツを提供することが不可欠、という結論。
    地元・兵庫での事例を聞き、地元との連携の可能性が広がったことは、大きな収穫。

  • Library of the Year 2015(主催・図書館総合展運営委員会)
    ご存じのとおり、今年のLoYは多治見市図書館が受賞!この受賞はつながりが生んだもの、と断言。詳細は、後日別記事に。
    この件、来月に大学図書館職員短期研修で講師をするときの格好の材料に。

図書館総合展に関する3,000件以上のツイートのまとめも作成されていますので、そちらもぜひ。情報だけでなく、期間中の熱気のようなものも、感じられると思います。


★苦言


素晴らしいフォーラムが多い図書館総合展だからこそ、ここで一つ苦言を。
フォーラムに参加された皆さん、質疑応答タイムでの挙手が少な過ぎるのではないでしょうか?

図書館総合展は、一方的に知識や情報を受け取るだけではなく、意見を伝え合い討論し合う場だと思います。その観点からすれば、フォーラムは質疑応答にこそ意義がある、とも言えます。

今年も全体的に質問が少なく、数百人の聴衆がいる会場で質問は私一人、などということがありました。参加者の皆さんには話を聞くだけではなく、ぜひ主体的に参加頂きたいと思います。


もう一つ言えば運営サイドの皆さん、短くても構いません、必ず質疑応答の時間を取ってください。
パネリストの長話で時間がなくなる・・・ということもよくあると思いますが、そこはコーディネーターや司会役との打ち合わせをしておくことで、何とかすべきところかと。

率直に言えば、商品やサービスのPRタイムの後で「質疑応答の時間がなくなりました」というのは、非常に辛いです。資料の配布である程度代替できる内容であれば、そこを削ってでも質疑応答の時間を確保頂きたいです。

スポンサーにこれを求めるのも酷だと思いますが、そこは図書館総合展という学びの場であるからこそ、そうした心意気で臨んで頂きたいと思います。
他方、参加されるライブラリアンの皆さんは、そうした運営サイドの心意気に、十分に思いをめぐらせるべきでしょう。

参加する側も運営する側も一緒になって、未来を語り合う図書館総合展をつくっていけたらいいですね!




★自主企画


ここでもう一度、楽しい話に戻りましょう。(笑)

横浜に滞在した間、毎日自主企画(飲み会)に全力参加しました。全力すぎて、最終日は新幹線を降りた後の終電を逃したほど。(笑)

毎年100人近くが集まる、図書館総合展運営協力委員主催の大交流会は、今年も大盛況でした。
ここ数年恒例ですが、ほぼほぼ準備はしぶたん(参考情報・2013)が、受付等は有志チームが担ってくれました。素晴らしい運営を、ありがとうございました!


2日目には、LDG(Library Drinking Girls)なる会の発足記念パーティーが開催されました。発起人となったのは、ご存じエル・ライブラリーのたにあん館長と、swimlibrarianです。

そして、パーティー中にサプライズで、参加者一同からエル・ライブラリーへのカンパがありました。写真はエル・ライブラリー広報大臣の私から、たにあん館長へ目録の贈呈をしているところです。



(2015.11.29追記)この件、エル・ライブラリーのブログにアップされました!谷合館長の喜びの声を、ぜひ!


(写真はエル・ライブラリーブログ掲載のもの。撮影・提供は、ARG野原海明氏)


また、最終日夜の「図書館総合展おまけ会」も、素晴らしい場でした。
こちらは図書館員だけでなく、本や図書館に関わる仲間が集まり、交流を深める場です。版元、取次、メーカー、システムベンダー・・・多くの仲間が集まりました。

企画くださったS沼さん、幹事の皆さん(特に来られないのにお店の段取り等をしてくださったK曽川さん)、ありがとうございました。

ちなみにこの会は、2年前に(S沼さんに幹事をムチャ振りされて)開催した版元×図書館員交流会がベースになっています。


楽しい連夜の自主企画のため、4日間とも2時より早くは寝られませんでした(苦笑)。これで日中起きていられるのは、やはり図書館総合展が魅力的だからですね〜!(笑)



★感謝


最後に、感謝を。
図書館総合展でご一緒くださったすべての皆さん、ありがとうございました。

特に、これだけの場を設けてくださった運営委員会、事務局、そして出展者・スポンサー・協賛・後援の皆さん、ありがとうございました。皆さんのご尽力なしには、図書館総合展は成り立ちません。本当に感謝しています。

ライブラリアンの皆さん、機会がありましたらこうした運営サイドの皆さんに、ぜひ感謝の気持ちを伝えましょう!
出展者の営業さんが職場に来られたときに、「図書館総合展に行ってきたよ!ありがとう!」というだけでも、いいですよね。その言葉が、また来年の図書館総合展につながります。


皆さん、本当にありがとうございました!
来年も横浜でお会いしましょう!来年の日程は、図書館総合展公式サイトにもう出ていますよ〜。

(ずいぶん長文になりましたので、「れいこと」コーナーはお休みします)

2015-11-09

あなただけが頑張ってもダメなんです、図書館は!

先日案内の記事も書きましたが、いよいよ図書館業界最大のイベント・図書館総合展が迫ってきましたね!
私は図書館総合展運営協力委員ですが、それ以前に一人のライブラリアンとして、多くの方にこのイベントにご参加頂きたいと思っています。当日参加も可能ですので、皆さんぜひ!


そうそう、別途ご案内しています「空手家図書館員さんを名古屋で囲む会@20151122」「東京で『空手家ライブラリアン』井上昌彦さんを囲む会」にも、ぜひ!



★眼科に行ったときに


さて、本題です。
先日ちょいとしたことで、眼科に行ってきました。知人の看護師さんから、「とても評判がよい医者」と聞いたので、わざわざそこを選んで行きました。

・・・が!
ダメダメでした、その病院。私は不愉快な気持ちで、帰ることになりました。

最初にドアを開けながら「こんにちは!」と声をかけた私に対し、受付のスタッフは下を向いたまま、愛想なく「診察ですか?」。
・・・もうこの時点で、こっちの印象はかなり悪いですよね?

受付を済ませて、医療スタッフの検査を受けたときも、そうです。私が「お願いします!」と言っても返事もなく、「これを読んでください」と紙を渡されただけでした。

とにかく、スタッフ4〜5人全員が無愛想。笑顔なし、最低限の伝達しか言葉に出さない状況でした。

ところがそれに対し、診察くださった医者は、評判のどおりの素晴らしい方でした。
笑顔で親切、説明も丁寧でウェルカムな雰囲気。安心して、受診することができました。




★ひるがえって


先生はとても良かったですが、私は絶対にこの病院には二度と行きません。行けばまた確実に、不愉快な思いをするからです。

ひるがえって、これを図書館で考えてみれば、どうでしょうか?皆さんの図書館は、こうした思いを絶対にさせないところでしょうか?

私の周りの熱意あるライブラリアンの一部(多く?)は、同僚との温度差に頭を痛めているように思います。
本人は一生懸命頑張ろう、ユーザーさんを喜ばせようと思っていますが、同僚みんながそう思っている訳ではない、というのはよくある話です。

そして、そんなときに私たちはえてして、「自分だけでも頑張ろう!」と思ってしまいがちです。

ですがそのとき、私たちの図書館は、この眼科のようになっているのではないでしょうか?どれだけいい医者がいても、他のスタッフがダメダメなら、患者は「二度とあの病院には行かない」と思うかもしれません。



★改めて自分の図書館を思い起こすと


ここで改めて、自分の図書館を考えてみるといいかもしれません。
例えば、ユーザーさんに笑顔で挨拶はできていますか?気持ちよい会話や受け答えができていますか?

カウンターに背を向けて座っているスタッフはいませんか?内職や雑談で、声をかけられるまでユーザーさんに気付かないことはないですか?
ユーザーさんがいるのに私語をしたり、大声で打ち合わせをしていることはないですか?返却された娯楽誌などを、パラパラめくっているスタッフはいませんか?

もしこうしたスタッフがいれば、ユーザーさんにとっては不愉快な印象を与えることでしょう(それが管理職であれ非常勤であれ)。それはもしかしたら、一人頑張っているスタッフがいたところで、挽回できない失点かもしれません。

「自分だけでも頑張ろう」ではなく、どうやってそうしたスタッフ全員、もっと言えばチームを変えていくか、私たちは考えるべきではないでしょうか。


手前味噌な話をすれば、私が前にいた短期大学図書館は、全員がこうしたことを強く意識できていたチームだと思います。
この図書館は、入館者数が4年間で2.4倍にもなったのですが、その大きな要因の一つは、スタッフの意識が変わったことだと思います。

この当時、私はボス的な立場でしたが、この入館者増は私の成果ではありません。私の言うことを受け止めてくれた全スタッフ、いわばチームの意識改革による成果だと思っています。
(もちろん他にもいろいろな要因があり、自分たちの手柄ばかりではありません)


ともあれ、自分だけが頑張るのではなくチームみんなで、まずはユーザーさんに気持ちよく利用してもらう、そんなことから図書館は良くなっていくのではないでしょうか(自戒とともに)。

私たちライブラリアンはプロですから、提供する技術・サービス内容のレベルが高いことは当然でしょう。ですが、まずはそれ以前のところにも気を配れるようになりたいですね。



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
このところ、自分とれいことの関係が、またちょっと変わってきたように感じています。


うまく表現できないのですが、れいこのことを考えると、楽しかった思い出よりも辛かった闘病のことばかりが思い出されます。
どこかでれいこのことを思い出すと、次にそこを通りかかったときにも、れいこのことを思い出してみたり。前よりもちょくちょく思い出しては、胸を痛める毎日です。


それでも日々、明るく振る舞うことができているのは、きょーこのおかげです。きょーこが、毎日を元気に過ごすエネルギーをくれています。

きょーこ、これからもお父ちゃんらを元気にしてや〜!
お前にはれいこ姉ちゃんも、ついとるけんな!

2015-11-06

空手家図書館員さんを名古屋で囲む会@20151122

このところ、いろいろとお誘いしてばかりのこのブログ。今日もまた、新たなお誘いです。



先日よりお誘いしています、図書館総合展やそれに伴う自主企画(図書館総合展 大交流会2015、LOD(Library Drinking Girls)、図書館総合展おまけ会)、12月の「東京で『空手家ライブラリアン』井上昌彦さんを囲む会」は、いくつか満席になってしまいました。
参加をお考えくださっている方、ぜひお早めに!


★空手家図書館員さんを名古屋で囲む会@20151122


さて、以前からいろいろとご縁の深い名古屋。
今回も妻の実家に帰省するのに伴い、名古屋で交流会を企画頂くことになりました。

以下のとおり開催しますので、東海方面の皆さん、ぜひご一緒しましょう。図書館に関心のある方でしたら、どなたでも歓迎です!

★空手家図書館員さんを名古屋で囲む会@20151122

【主催】
東海ライブラリアンおもてなし隊
【日時】
2015年11月22日(日)18:30-(遅刻・早退でも歓迎!祝日前夜です!)
【場所】 【参加資格】
図書館に関心のある方なら、どなたでも。図書館員の場合、特に専任でない方、派遣・委託の方を大歓迎!(所属を公開しにくい方は、館種等のみでOK)
【定員】
15名(先着順)
【参加費】
2,300円(税込み)
【お申し込み】
11月17日(火)までに、お申し込み専用サイトから。


私も愛知でこうした飲み会を開催頂くことが重なり、いつの間にやら東海地方のライブラリアンの知人が軽く100人を突破しました。
こうした場でご縁が広がり、深まることを本当に嬉しく思います。

いつも歓迎くださる、東海ライブラリアンおもてなし隊の皆さん、ありがとうございます!本家・関西ライブラリアンおもてなし隊を圧倒するほどの活動ぶり、素晴らしいです!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。
先日、近所の植物園へ、うそれいこ&きょーこを連れて行きました。



家族とののんびり過ごせることは、本当に嬉しいことです。
このごく平凡な日常にどれほどの意味があるか、れいこが教えてくれました。

子育てなんて、ほんの短い時間です。
できるだけ、きょーこの成長を見守る時間をつくっていこうと思います。

2015-11-03

TPPで変わる日本の著作権制度、ライブラリアンはどう考える?
(日本図書館研究会で福井健策先生のお話を聞いてきました)

まずは、雑談から。
ご案内差し上げていました「人物図書館 in 大阪」が、無事終了しました。満員御礼、大盛況でした。ご参加くださった皆さん、運営の皆さん、ありがとうございました!


先週は他にも、ダイトケン(大学図書館問題研究会)兵庫支部の自主企画で、神戸の書店巡りをしてきました。上の写真はその収穫で、わが家にとっては一番下に敷かれているアンパンマンが最も大切。(笑)

行った中で特に印象的だったのは、神戸板宿で「我々は感動伝達人である」という素晴らしいコンセプトを掲げる井戸書店さん、ビールを飲みながら本も選べる元町の古書店1003(せんさん)さんでした。楽しい時間を、ありがとうございました!



★日本図書館研究会 図書館学セミナー「図書館に関係する著作権の動向2015」


さて、本題です。先日、標記セミナーに参加してきました。
著作権という館種を問わず関わりの深いテーマ、そして話をされるのが福井健策先生&南亮一さんとあって、会場はギッシリ満員でした。


図書館界屈指の著作権の大家・南さんですが、この日は「動向を理解するための著作権のキホン」と題し、あえて自称・前座に徹しておいででした。
とても判りやすいお話でしたが、役割上一般論的なものでしたので、ここでの紹介は割愛したいと思います。

また、他の先生方のご講演もありましたが、あまりにも福井先生のお話が魅力的でしたので今回は割愛し、福井先生のレポートに注力したいと思います。

当日の様子は、アカデミック・リソース・ガイド社の岡本真氏がつくってくれたツイートのまとめが詳しいですので、ぜひそちらから。



★「TPPと著作権リフォームのゆくえ」(福井健策先生)


お話はタイトルどおり、TPPにより日本の著作権制度がどのように変わってゆくのか、どういった課題があるのか、お聞かせ頂きました。

私は、福井先生のお話を初めてお聞きしましたが、素晴らしいお話でした。
整理された論点、判りやすく伝える技術、気さくな態度、そして明確なご自身の主張。引き込まれるように、2時間近くお話に聞き入りました。
(テレビ・新聞などでも、著作権の専門家としてひっぱりだこであることが納得です)


お話によれば、TPP知財条項によって様々な点での著作権法改正の可能性があるそうですが、もっとも重要な点は以下の2つかと思います。

  • 保護期間の延長
     著作者の死後50年という保護期間が、70年へ変更。
  • 著作権侵害時の非親告罪化
     著作権者が起訴しない限り国が処罰できなかったものが、今後はそうでなくなる。

(*注)まだTPPが発効した訳ではありませんので、これらは流動的なものです(以下も同様)。



以下、この2点について福井先生がおっしゃったことを、私なりにまとめます。

保護期間が延長されることはそのまま、著作物が自由に使えるまでの期間が長くなることを意味します。
これは、ディズニーに代表されるごく一部の長寿命コンテンツ(=ビジネスとして、死後50年以降も成り立つもの)を保護するためと言ってよいでしょう。

(背景にあるのは、年間15兆円にものぼるアメリカの海外特許・著作権使用料収入です。今回の「死後70年」も、同国が強く推進しています)

青空文庫のように、自由に使えるコンテンツの範囲が狭くなり、ごく一部の権利者や特定の国を利するこの改正が本当に必要か、慎重な検討が必要とのことでした。


また、著作権侵害時の非親告罪化についても、大きな影響があるそうです。
「原作の市場での収益性に大きな影響がある場合」などといった条件が付けられていても、実際の運用は流動的であり不安が残る、とのお話でした。

例えば駐車違反している車があるとき、誰かが警察に電話すれば取り締まりに来ます。著作権侵害についても、グレーゾーンであっても誰かが通報すれば、国は動かざるを得ないかもしれません。

その可能性を考えれば、パロディ、ビジネス等の萎縮が起こり、結果的に日本の文化やビジネス活動に悪影響をきたす恐れもあります。


先生からはこうしたリスクをふまえ、アニメ・コミック・ゲームといった点を含めて日本の文化を考えるときに、今回のTPPに伴う著作権制度の見直しが本当に最善か、と疑問が投げかけられました。
また先生からは、フェアユース導入、アーカイブ推進法の制定などを含めた、日本モデルを模索するべき、とのご指摘がありました。

併せて図書館界に望むものとして、業界としての意見を早急に集約しそれを声明にするべきだ、というお話を頂きました。




★雑感


今回の著作権制度の見直しは、情報の世界における近年の試みと真逆の方向性のように思えます。

近年情報の世界では、様々なデータをアーカイブし、公開し、それだけではなく社会全体で自由に使えるようにしよう、という発想が中心でした。
例えばLinked Open Data、オープンサイエンスといった考え方からもそれは伺えますし、先生のおっしゃった青空文庫、他にも東寺百合文書などといった素晴らしい試みも多く見られます。

こうした私たちの行動と法改正とが噛み合ない以上、先生もおっしゃっていたとおり、自分たちで議論し集約して、それを発信することが重要になるのでしょう。

図書館界で言うなら、日本図書館協会などが中心になって、意見を集約する必要があるのでしょう。
そのためにはまず私たち個々のライブラリアンが、現行著作権制度の課題やTPPをめぐる議論の動向を把握し、自分なりの意見を持つことが大切だと思いました。

今回の法改正への議論は、著作権に関するプロフェッショナルでもあるライブラリアンとして、私たちが本気で向き合うべき案件なのでしょう。

TPP締結、そしてそれに伴う著作権法改正まで数ヶ月しかないかもしれません。
私も急ぎこの件について勉強し、自分なりの意思表示等、何か行動に移したいと考えています。皆さんにも、ぜひそうしたことを一緒に考えて頂ければと思います。


非常に素晴らしいご教示をくださった福井先生、南さんはじめ日本図書館研究会の皆さん、貴重な場をありがとうございました!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

4年前、れいこは「明るく強く」病気と闘う毎日でした。
そんな中、ちょうど秋のこの時季に、れいこは自然学校に行きました



闘病中で半身麻痺、様々なトラブル。
私たちは不安だらけでしたが、れいこの強い希望もあって、自然学校に参加することにしました。学校や自然学校の手厚いサポートの中、れいこは私たちの手を離れ、5日間を元気に乗り切りました。

たった5日間、されど5日間。
ちょっぴり大人になって、元気で帰ってきたれいこを、私たちはどれほどの喜びで迎えたことでしょう。自分がいかにわが子を愛しているか、改めて感じることができました。


そして今、れいこは星になってしまいましたが、きょーこがそばにいてくれます。
れいこに抱いた愛情まで、きょーこにはかけてやりたいです。小さなことに一喜一憂せず、のびのび育ててやりたいと思っています。

でも、きょーちゃん!
そのイヤイヤ連発をもうちょっと減らしてくれたら、お父ちゃんたちは嬉しいけどな!