2010-11-18

講演会「iPadが図書館を変える?」に参加

写真は、私のお気に入りの店に置いてある、ベルギーのビール、シメイ(ブルー)。ちょっと濃いめの味、とても美味しいです!


しかも、いつもお世話になっている方に、しっかりご馳走になってしまいました。
タダ酒なのに、ブログのネタには使います。(笑)

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さて、今日の本題。
今さらですが、10月19日(火)に開催された、京都大学図書館機構講演会「iPadが図書館を変える?~これからの出版、教育、大学図書館~」に行ってきましたので、その報告をします。

開催主旨や当日のプログラムは、上記リンクからご覧ください。当日の資料については、京都大学リポジトリKURENAIからご覧になれます。

「そもそも、このタイトルは何ぞ!?」と、思わずツッコミから入ってしまいますよね。
でも講師陣は豪華で、お話は極めてマトモ、講演タイトルはツカミにしか過ぎない、ということでしょうか。
<まんまと、ツカまれている私。

・・・それにしても、ブログで一ヶ月も前のことを取り上げる人、あんまりいませんよね?(笑)

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●「変貌する電子出版:1985年~2010年を総括する」
(講師: 夙川学院短期大学 湯浅 俊彦氏)

  • ここ数年、Googleブック検索訴訟などを経て、出版社にも危機感が広まった。出版社の権利ビジネスの空洞化、が起きていることが明らかに。
    現在の電子書籍の前史として、「防衛としての電子書籍」の歴史がある。15年くらい前に電子書籍が試行され始めた頃、「やらなきゃ、やられる」的に取り組んだ例がある。それはあたかも、「自社で文庫化しないと、他社で文庫化されてしまう」という危機感のようだった。

  • よく誤解されているが、慶應義塾がスキャンに提供したのは、著作権が切れたものだけ。著作権の切れていない日本の図書は、アメリカのプロジェクトでスキャンされたものと思われる。

  • 背景には、出版の長期低迷があり、デジタルコンテンツへの期待がある。例えば、講談社ですら前年度決算で、雑誌・書籍・広告など全部門で前年を下回る売り上げの減少。

  • 「電子書籍元年」は、本物か?かつて何度も、そう言われたのでは?しかし今回は、以下の理由により今までとは状況が違う。

    • Googleブック検索訴訟により、デジタル化が不可避であるという現状認識が、中小零細を含めて出版社に浸透した。

    • 出版販売額の低下は、出版業界の構造転換によって解決せざるを得ないことが明らかに。例えば雑誌の広告よりもネット広告が優位となり、雑誌メディアの広告モデルそのものが凋落。

    • 国立国会図書館の大規模デジタル化、納本制度審議会の答申、そして例の長尾構想などにより、出版業界は意識改革を迫られた。


  • 「電子書籍」の定義は困難。かつては、パッケージ系とネットワーク系などと区分する場合もあったが、現在の状況には馴染まない。そもそも、デジタル化されたコンテンツには、書籍や雑誌という区分や、1冊2冊という数え方にも意味がない。

  • 「出版年鑑」によれば、2009年の電子書籍の発行点数は、26,474件。ちなみに紙の本は、同年で78,501件。
    また、「電子書籍ビジネス調査報告書2010」によれば、電子書籍の市場は574億円で、うちケータイ向けは513億円、さらにそのうちコミックが428億円。
    ただし、これらに「魔法のiらんど」などは含まれていない。そもそも、出版と呼べるかどうかが難しいが。

  • 2000年に「デジタル時代の出版メディア」を上梓し、デジタル化が出版界にもたらす影響について、検討した。価格の問題提起、系列化・外資参入、取次と書店の地位の低下などを指摘したが、おおむねその通りになってきた。

  • コンテンツのデジタル化は、海外の学術出版界で展開されてきたが、あらゆる分野で進展するようになった。デジタル雑誌、コミック、文芸書、新聞連載の新書化、ネット上の無料公開など。
    グーグル・エディションのように、電子出版から巨大な出版コンテンツ・データベースへという変化が起きている。それには、寡占化、表現の自由、長期保存といった課題もある。

  • 電子出版を巡り、出版業界の利害調整が進んでいる。様々な団体・協議会・懇談会が設立されている。長尾構想には期待するところ大だが、出版界からの反発も強い。
    長尾氏と言えば、1994年の電子図書館プロトタイプシステム「アリアドネ(Ariadne)」は重要なもの。電子図書館の可能性を示すことに成功したが、普及には至らなかった。出版界がこれに協力さえしていれば・・・?

  • 今月、OCLC副社長ジェームズ・ミハルコ氏が来日し、NDL関西館で講演を行った。非常に示唆に富んだ内容。
    「結論として、電子出版への転換、電子書籍への転換というのは学術図書館の様相を変えていくであろうということ。そして学術図書館はそのリソースを使って、もっと効率的な地元での価値を出せるような形に変貌するだろう。過去の伝統的な役割を超えて、もっと広範囲な価値を提供して、教育や研究の成果物を提供できるように変貌していくと思われる。」

  • 本日の結論として、以下の4点を挙げる。

    • 日本の出版業界において電子出版が本格的に取り組まれつつある。

    • 従来はデバイスへの依存度が高く、タイトルリストは貧弱であったが、「電子出版」から巨大な「出版コンテンツ・データベース」へと方向が変化してきた。

    • 紙媒体の資料のデジタル化と電子出版物の流通によって、図書館資料の定義が大きく変わるだろう。

    • コンテンツプロバイダーとしての図書館の役割が改めてクローズアップされることになるだろう。

湯浅先生は、やはりこの分野の権威ですね。配布資料を見たときに、これは到底話し切れないな・・・と思いましたが、そこはもうサクサクと。いつもながら、ポイントが整理されていて、とても判りやすいお話でした。

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●「新時代のモバイル端末による大学教育支援について」
(講師: 京都大学大学院情報学研究科 中村 聡史氏)

  • ユーザーインタフェースの全般について、研究を行っている。特に、あいまいな情報にもとづく検索に関心がある。
    例えば、意図にもとづく検索県下のダイナミックな再ランキングを実現する方法として、Rerank.jpを作成している。具体例を挙げれば、レシピを検索して、ピーマンを切らしているのでランクを下げたり、ソーセージが多くあるのでたくさん使ったりするよう、検索結果を変更できる。
    →(井上コメント)これ、すごく面白い!ぜひ、お試しを!

  • 図書館関係でこれを応用すれば、OPACやAmazonの検索結果について、「この著者を、上位に上げたい!」、「講談社の本を優先して表示させたい!」といったニーズに対応できる。

  • 漠然とした意図に応える検索を考えている。例えば、「京都っぽい和食を食べたい」とき。「京都 and 和食 and 豆腐」と入れたときに、「豆腐」だけでなく「湯葉」とか「京野菜」もひっかかるような検索を実現したい。

  • 所属している情報教育推進センターでは、講義のオンライン化を行っている。学生の通学時間など、空いた時間に講義の復習などをできるようにしたい。iPhone、iPad、iPod touchで、見られるものを用意した。動画とスライドを時間で管理し、同時に並べて表示する。
    スライドをタップして、テキストを付加できる。判らない部分を教員に伝えたりすることができ、双方向の発信が可能。

  • (デモ上映+講義ファイルを入れたiPod touchとiPadを回覧)

  • 80台のiPod touchを用意し、システムをインストールした上で、学生に利用させた。アンケートを取ると、利用は自宅が多く、通学時間などを狙ったコンセプトと多少の差。手軽さという点で、学生から高い評価を得た。
    一方、インターフェース、アップロードまでの時間、ダウンロードの所要時間などの課題が残る。

  • センターのミッションとして、新時代の情報教育手法として、世の中に広めたい。XMLの仕様も公開している。企業発のサービスではなく、大学発サービスであることの重要性を感じている。

中村先生は、先月私がARGカフェで登壇したときに、一緒に参加されていた方です。ARGカフェ+フェストではお話できなかったのですが、今日講演後にご挨拶することができました。
とてもユニークな研究で、図書館にも大いに活かせる点がありそうです。情報学関係の研究には、もっと注意を払わなければいけませんね!

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●「これからも『図書館が必要』と思ってもらうための挑戦: これからの大学図書館の役割・将来像について」
(講師: 慶應義塾大学メディアセンター本部 入江 伸氏)

  • 「もの時代」から「電子時代」に、時代が変わっている感覚が大切。図書館の社会的な役割も、変わってくる。図書館は、どういう役割を果たすのか?どのように設計するのか?

  • インターネットの時代に、図書館はどうなる?著作権を例にとっても、図書館はサービス特権を持っていない。また、図書館の運用スキルはどうなる?これまでの図書館スキルが、通じるのか?

  • ハイブリッドとは、紙からデジタルへ移行するための一時的過程に過ぎない。紙を管理するモデルから、デジタルへシフトする。紙とデジタルを、両方管理できるのか?

  • これからの図書館はどうなるか?学生・研究者のニーズを満たすこととは?「日本語の電子ジャーナルが出ない」と待っているだけなら、図書館など不要。

  • 社会と無関係に図書館の中だけで完結しても、継続的な力にはならない。社会の情報精算と流通の流れに図書館を位置付け、図書館を再編する取り組みが必要。

  • 図書館は、電子図書館になれるか?目録にかけるコストを維持できるのか?全文検索の可能性は?10万冊あっても、テキストデータだけなら90G程度のものでは。クラウドにするなら、データ量よりも金銭面の問題か。

  • インターネット上の図書データで重要なものは、ユニークなID。ISBNがない頃のものが、勝手が悪い。アメリカでは、蔵書の30%はデジタル化されているが、日本では?

  • 海外は、「本気で」デジタル化を進めている。日本は、「圧倒的に」デジタル化が遅れている。日本語でタイトル数が多いのはNetLibraryだが、世界中で評判が悪い。

  • 雑誌の購読を止める権利を持たない図書館が、E社などと交渉できるか?ペイ・パー・ビューなどにして、先生に交渉してもらえばよいのでは。

  • 慶應義塾大学が取り組んでいる、電子学術書実証実験は、図書館・出版社・書店が、学生のために共同で商品を開発するコラボ。ビジネス確立へ向けた実証実験である。

  • 実験では、各種ハードウェア(PC・電子書籍端末・スレート端末など)の実用性、利便性評価などを行いたい。この実験成果により、長期的に読者・研究者・利用者を確保し、日本語の文化を維持・発展させる。

  • 実験を進めるため、出版社には著作権処理済みの書籍の提供を求めている。また、オープンな実験であるため、出版社に限らず、関心のある方の協力をお願いしたい。


入江さんのお話のうち、最もお聞きしたいと思っていましたのは、最後の実証実験でした。
約2,000冊の電子書籍を提供予定とのことでしたが、これは実験のボリュームとしてどれくらい妥当なものであるのか、正直懐疑的に感じていました。
質疑応答の時間に率直に伺ってみましたところ、やはり2,000冊で妥当と思われているのではないようで、用意できるコンテンツに限りがあるのが実情、とのことでした。

それにしても、慶應さんならではと言いましょうか・・・この実証実験そのものには、強くエールを送りたいと思います。

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以上、充実した講演3本のレポートでした。
この日は、講演後に懇親会があり、もちろん参加したいところでしたが・・・ちょうど大学院の授業のため、泣く泣く欠席しました。残念!

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<●どうでもいい独り言>

実は今日、急に午後休を取ってしまいました。
息子が風邪でダウンし、学校から迎えにおいでコールが入ったのです。幸いたいしたことはなく、病院でも風邪とのことで、薬をもらって早く休ませました。
<おかげで、ブログが。(笑)

でも、学校からの電話は、妻の携帯に留守電で入っていただけ。妻がちょうど忙しく、電話に気付かないまま、昼過ぎになってしまいました。
1時間目には保健室に行っていたようなのですが、息子はそのまま迎えが来ずに、半日入院生活。可哀そうな、わが子・・・。

先日は、妹の方が風邪で休んでしまいました。
ずいぶん風邪が流行ってきているようですので、皆さんもお大事に。
特に図書館関係者の方は、来週は図書館総合展があります!体調管理は、しっかりとしておきませんと、飲み会・・・もといフォーラムに支障が出ますよ~。
(私が運営委員をしています「トサケンフォーラム」もお忘れなく!)

それでは、押忍!
 

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