2009-05-23

塩澤実信「出版社(新訂版)」を読んで

常々思っていることがあります。
図書館員の多くは、自分の業務に対して非常に熱心で、
研鑽も積まれていますのに、ほんのちょっと業務範囲を
超えると、意外に無関心だったりするのでは?

例えば、大学/短大図書館員であれば、公共図書館や
専門図書館の活動について、関心を持っていて良さそうです。
ですが実際のところ、多くの方は、それほど関心を
お持ちでないように思います。
これは私の周りだけでもなく、一般的な傾向のような。

同じ本の世界でも、違う館種の活動であるとか、執筆活動で
あるとか、書店についてだとか。
出版社についても、そう。

-------------------------------------------------

例えば、以下のクイズ。

Q1.日本の出版社は、およそ何千社あるでしょう?
Q2.日本の出版社の総売上は、おおよそいくらでしょう?
Q3.出版物の返品率は、おおよそ何十%でしょう?

図書館員にとって必須の知識ではありませんが、
現在の書籍をめぐる状況を知るためには、数字の
イメージだけでも知っていれば、いいですよね。

-------------------------------------------------

私自身、以前からそう思いながらも、そうした違う
本の世界について、何も知らないまま今に至っています。

現場復帰を果たしたことですし、これからは少し、短大
(大学)図書館を取り巻く本の世界について、
少しずつでも勉強していきたいと思っています。

・・・・と、ネタを振っておいて。
今回、塩澤実信さんの著書「出版社(新訂版)」を
読みました。(株)実務教育出版の「比較日本の会社」
シリーズの一つですので、ご存じの方も多いでしょう。

 塩澤実信(著) 「出版社(新訂版)」 (Amazon)

-------------------------------------------------

読んでみて思ったことは・・・「わしはやっぱり、出版に
ついて、何も知らんのう」でした。<愛媛風。
いや、ホントに知らないことばかり。(笑)

本書は、現在の出版をめぐる状況、出版とは何か、
出版の歴史、出版社の体質と機構、出版の流通経路、
主要出版社のプロフィールなどに関する章立てで、
構成されています。
巻末には、出版に関する各種データが記載されています。

冒頭のクイズの答えは、以下のようになります。

>Q1.日本の出版社は、およそ何千社あるでしょう?
 A.約4,260社です。

>Q2.日本の出版社の総売上は、おおよそいくらでしょう?
 A.約2兆3,480億円です。

>Q3.出版物の返品率は、おおよそ何十%でしょう?
 A.年により上下しますが、35~40%程度です。
   ちなみに書籍の損益分岐点は、30%以内とされています。

回答は、今回紹介した「出版社」の数字をそのまま使いました。
少し古いデータかもしれませんが、傾向として把握する分には
支障ないと思います。

-------------------------------------------------

以下、断片的ながら、本書で得た豆知識を。
いずれも国内の情報で、自分の防備録を兼ねてメモ。(笑)

・書店総数は1万数千店、年間1,000点が廃業している。
 (一方、大型書店の出店により、販売面積は増加)
 後継者問題、売上低迷、新刊ベストセラーの配本不足が
 三大要因とのこと(日書連調査)。

・出版業界の寡占状態を表すデータとして、上位10社で
 市場の4割を占有、大手50社になると実に6割。
 残りわずか4割を、4,000以上の出版社がシェア。

・出版社の半数を超える2,200社強が、従業員10名以下の
 零細出版社。

・書籍売上ピークの1996年は、約2兆7,000億円の市場。
 以来、ほとんどの年で右肩下がりで、その衰えぶりは
 目を覆うばかり。

・出版点数1位の講談社は、年間約2,200点を刊行。
 一方、刊行点数上位250社を除いた約4,000社では、
 年間約7点しか刊行していない。

・「雑誌」を冠した初の定期刊行物は、1867年に
 柳河春三が刊行した「西洋雑誌」。

・職業としての本屋が出現したのは、慶長年間(1596~
 1615年)。当時は、印刷・出版・販売を行う。

・「上梓」という言葉は、木版の板木に、彫りやすい
 梓(あずさ)を用いたことによる。

・取次は、わずかに36社(日本出版取次協会加盟)。
 出版社数の1%に過ぎない。

・通常の取次ルート以外にも様々な販売ルートがあり、
 鉄道弘済会ルートもその一つ。JR駅売店を通じて
 販売するルートで、週刊誌・月刊誌などは、
 このルートに入らないと発行部数が30~40%違う。

・出版社が取次ぎを通して小売書店に販売を委託する
 普通委託(新刊委託)制度について。
 委託期間は通常、取次と小売書店の間は3ヶ月半、
 取次と出版社の間は6ヶ月しかない。

・常備寄託とは、出版社が取次または小売店に対し、
 限られた種類と数量を寄託して、常時店頭に並べ、
 売れたらすぐ補充する制度。通常1年契約、各1冊。

-------------------------------------------------

本書は、さすがに塩澤さんの本だけあって、いろいろと
勉強になりました。

こうした内容も、意外に知らない方が多いのでは?
何か関心のある分野だけでも、図書館業務の周辺について、
知っておくといいと思います。
<私が偉そうに言える立場ではありませんが。(笑)

図書館ネタ以外でも、こうした違う本の世界について、
面白い情報がありましたら、ぜひお知らせください!

-------------------------------------------------

ところで。
新型インフルエンザについて、お膝元(?)の兵庫では、
ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。
たいていの公共機関も、来週から通常どおりオープンする
ようですね。短大/大学も、明日から授業再開という
ところが多いです。
私の勤務する某短大でも、明日から授業です。
ようやく学生さんが戻ってきて、活気が出てきそうです!

0 件のコメント: