2009-06-20

「売れ筋本ばかりの図書館はいらない」

最近、ブログに(そこそこ)力を注いでいる私。
レイアウトを変更して、何だか新鮮で嬉しいです。勢いに乗って、アクセスカウンターも設置してみました(このページ右上です)。FLFの後のせいか、意外にアクセスが多いのに吃驚。

 (FLFについては、下記の投稿をご覧ください。)
  6月20日投稿 自由なるライブラリーフィールド」
 http://karatekalibrarian.blogspot.com/2009/06/618.html

誰も読んでいないのだろう・・・と確信していたのですが(笑)、アクセスカウンター設置後40時間弱で58アクセス!
<もっとも、そのうち5カウントくらいは、自分。

正直、こんなにアクセスされているとは、予想もしていませんでした。イメージは、1日5アクセスとか、そんな程度かと。
週末だから、かえって多いのでしょうか?今まで相互リンクも貼っていませんし、ここを狙ってみてくださっている方が、いらっしゃるのでしょうか・・・??やっぱり、FLFメンバーが読んでくださっているから???(謎)

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さて、今日の本代・・・もとい、本題に。
20日(土)の朝日新聞(朝刊、25面「オピニオン」)に、佐野眞一さんの記事「売れ筋本ばかりの図書館はいらない」が掲載されていました。

ご存じかと思いますが、佐野眞一氏は「だれが「本」を殺すのか」や「だれが「本」を殺すのか 延長戦」といった力作で知られているとおり、出版や図書館といった世界について、非常に造詣の深い方です。





 「だれが「本」を殺すのか」
 (通称:「本コロ」)

 (お薦めです!!)






今回の記事は、図書館界では定番的な論点となった、ベストセラーの複本大量購入に関するご意見です。いわゆる図書館貸本屋論争の、一方の主張ということになるでしょうか。
私は、公共図書館に関する知識もなく、図書館貸本屋論争にも詳しくありませんが、判らないなりに、少しだけご紹介を。

まず、氏の主張のうち、ポイント(たぶん)を、以下に抜粋します。

・「利用者に言われた通りやってりゃいいの?」
・「時には『そんな本くらい自分でお買いなさい』と言ってもらいたい。」
・「ポピュリズムの果ての、金太郎飴のような図書館のいかに多いことか。」
・「図書館も判断停止しちゃってるんじゃないか」
・「欲しい本がタダで読めますよ、で利用者を集めるなら、図書館が知を高める場所ではなく、知のレベル低下に手を貸す空間になりかねない」
・「売れ筋本には、館内の活性化、知への入り口として一定の役割がある。だけど蓄積としての蔵書が充実していないと、図書館の強みである『閲覧』という機能が働かない。」
・「本そのものの文化的価値を生かす企画は、いくらでも考えられる。企画力で利用者を引きつけることが、図書館により多くの人を集める核になるべきなんだ」

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上記「本コロ」からもよく読み取れますが、氏は図書館におけるベストセラー本の大量購入に対し、明確に反対の立場を取っています。今回の投稿も、内容自体は目新しいものではなく、以前からの主張に基づくものです。

ベストセラー本の大量購入を非難する立場は、大きく2種類のスタンスに区分できると思います。

 (1)図書館の蔵書構成上、望ましくない
 (2)著作権者の利益を損ねている

佐野氏は、明らかに(1)の立場に立っています。
この記事の中でも、著作権料が入らないからではないか、という問いに対して、「そんなことじゃない。(略)作者は読んでもらうことが一番なんです。買ってもらおうが、借りて読まれようが」と答えています。

一方で、(2)の立場の方も、当然多くいらっしゃいます。某協会など、あちこちの執筆者による団体は、基本的にこうしたスタンスで、いわゆる「公貸権」やその補償料導入に関する議論もされていますね。
<もちろん私は、この手の議論にも全然!詳しくありませんが。

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私も基本的に、氏の意見に賛成しています。<以前からね。
図書館には図書館の機能があり、一定の目的を持って資料を収集・提供・保存していく、それが原則でいいと思います。

ベストセラー本の複本大量購入については、程度問題かとも思いますが、3冊かそこら(根拠なく適当な数字)を上限に、回したらいいような気がします。
待ってでもベストセラーを読みたい人は、そうしたらいいじゃないですか。早く読みたい人は、買えばいいじゃないですか。
<少なくとも、私はそうしてます。

・・・などとテキトーに書くと、「『買えばいいじゃないか』で済むなら、図書館なんて要らない!」などと、真剣に反論されそうで怖いですが。
ま、この場で本格的な議論をしようと思っているわけではありませんので。あまり状況を知らない者が、素直に思ったまま、書いていると思ってください・・・と逃げてしまう私。

話を戻して。
図書館は、買いたくても買えない本をストックしていく機能が求められますよね。
そこが、本の提供をするという意味では同じ書店とは、違う役割かと。書店は、現在流通している図書を流す、いわばフローの場。それに対して、図書館はストックの場、と。

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もちろん、これに反論する意見も、公共図書館関係者を中心に出されています。
安易な貸出優先の意見は論外として、かなり具体的で理性的な検証もなされています。私が知る中では、田井 郁久雄さんの主張に、強い説得力を感じます。
下記の論文には、単なる貸出主義ではない、公共図書館サイドからの訴えを感じました(もうだいぶ前で、読んだ中身をあまり詳しく覚えていないのですが・・・)。

 複本購入の事例分析と複本購入批判の検証
 田井 郁久雄
 図書館界 53(6) (303) pp.508〜524 2002/3

その主張を要約する力は、当然私にはありません(笑)。関心のある方は、上記文献をご覧ください。

・・・という訳で。
オチもないのに、今回の記事はおしまいです。この論争については、かなりの部分が言いつくされながら、結論が出ず平衡状態になっている気がします。
このブログの主旨どおり、この論争について要約したり、まして本格的な議論をするつもりはありません。そもそも、この対立の構図(?)は、私が簡単にまとめられるようなものではないでしょうが、そこは知らない者の強みで書いてしまいました。

今回、朝日新聞にこうした記事があって、井上も「それに近い感じかな~(スーパーアバウトに)」と思っている程度に受け止めてくだされば十分です。

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ところで。
こうした新聞記事を紹介するのですから、「朝日新聞Webサイトに全文が掲載されていますので、以下URLから・・・」と書きたいところだったのですが、相変わらず新聞社のWebサイトには、記事があまり載せられていない様子。

カネを払った人だけに、配達される紙面なり、有料データベースなりで、本文を読んで欲しいい、というスタンスなのでしょうか。それはそれで間違えていませんし、「無料Webサイトに全文を掲載したら、誰もカネを払わなくなるのでは?」という危惧もありましょうが、それにしても・・・ねえ。

一昔前の、インターネット黎明期。
佐賀新聞が無償で全文記事検索・閲覧機能を提供し、非常に有用なサイトとして評判になりました。あちこちの図書館からリンクを張られて、佐賀新聞は、一躍その名を高めましたよね(残念ながら、だいぶ前に中止されたようですが)。
これは極端な例かもしれませんが、新聞サイトにも、いろいろなやり方がありそうです。

<ちなみに私も、前の職場(大学図書館)HPから佐賀新聞へリンクを張ったり、オリテンで学生に使わせたりしました。

他社との差別化などで考えるのでしたら、むしろ、Webサイトを徹底的に使えるものにするっていうのは、どうでしょうかね?紙面に集約しきれない情報を、ガツガツとてんこ盛りに載せてしまうとか。

例えば、関連する今までの記事一覧、記事の背景、インタビューの全文、情報元、統計の生データや出所。いやというほど情報を載せまくって、「○○新聞Webサイトの情報量は、世界一!」みたいな。
かつての佐賀新聞のように、評判のサイトになりますよ!
<採算取れるかどうかは、知りません。

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<どうでもいい独り言>

このブログを使って、ゆるいコミュニケーションを図りたいという願望、少しずつ実現できています。ご縁のある方々には、「ブログやってま~す!」とお伝えしているので、結構ちょくちょくメールを頂きます。

昨日頂いたメールの一つが、FLFでご一緒した方からでした。
このブログを見て、「(井上と)同い年、しかも図情大卒、という共通点がありました!」とメールを頂きました。
図情大での在籍年度が違うために、今まで同窓とは判らなかったのですが、何だか急にお近づきになった気が(思い込みが激しいタイプです、私)。

他にも、井上が羨ましい!というメールも頂きました。
その方は、昨日カウンターで対応された際、声をかけても無言(無視?)で、ほとんどスルーされたそうで。学生さんに日ごろから挨拶してもらえたり、道案内してもらったなんて、本当に羨ましいとのことでした。

「自由なるライブラリーフィールド」のような勉強会などの後は、レポートを書いているせいか、参加された方が読んでくださっているご様子。特に、こうした感想メールなど頂くと、本当に嬉しいですね!

よかったら、皆さんもご意見・ご感想など、ぜひお寄せくださ~い。さらに言えば、コメントとして書いてもらえれば、ブログも賑やかになります!
いやいや、こんなブログですが、やってて良かった~!!

2 件のコメント:

71年生まれの同窓生 さんのコメント...

佐野眞一さんの記事は、私も気になって、切り抜いていました。
学生からのリクエストで、小説がどんどん増えていく中、(913.6がパンパンでもう1冊も入らない状態!読みたいのは私も同じだけど・・)こんなんでいいのかなー、ってちょうど思っているところでしたので。
しかし、選書って難しいですね。
うちの図書館では、選書方針が明文化されていなくて、これから(何年先になるかわかりませんが・・)作ろうかというところで、今年初めて、私も選書のお仕事をするようになって、楽しくもあるけど、勉強不足で困ってます。
あと、佐野さんの記事にもあったように、少し古い本でも、あるテーマのもとに特集を組んで紹介すると、結構貸出されていますね。
当館でも、特集コーナーやっています。それと、今年から、「図書館員おススメ」という、推薦文を書いた帯を手作りで作って、新刊コーナーに並べるようにしたのですが(うちのアイデア係長考案)、これも、自分のおススメが貸出されるとひそかにうれしいです。
選書とからめて、これからもう少し力を入れて行きたいなと思います。

井上 さんのコメント...

71年生まれの同窓生さん、ご意見ありがとうございます!
こちらでは、お初ですね!(笑)コメントを頂きましたこと、非常に嬉しいです!

図書館の選書というのは、非常に重要で、かつ難しいですね。
選書方針をどれだけの文章にしたところで、それに該当するかどうか、結局個別の判断に委ねられる面は残ります(もちろん、それでも選書方針は必要かと思いますが)。

「図書館員おススメ」は、いいアイディアですね!私の図書館でも、そのアイディアを盗用・・・じゃなくて、活用させて頂くよう、考えてみたいと思います。

コメントをありがとうございました!
ぜひぜひまた、ご意見等お聞かせください!