2015-11-03

TPPで変わる日本の著作権制度、ライブラリアンはどう考える?
(日本図書館研究会で福井健策先生のお話を聞いてきました)

まずは、雑談から。
ご案内差し上げていました「人物図書館 in 大阪」が、無事終了しました。満員御礼、大盛況でした。ご参加くださった皆さん、運営の皆さん、ありがとうございました!


先週は他にも、ダイトケン(大学図書館問題研究会)兵庫支部の自主企画で、神戸の書店巡りをしてきました。上の写真はその収穫で、わが家にとっては一番下に敷かれているアンパンマンが最も大切。(笑)

行った中で特に印象的だったのは、神戸板宿で「我々は感動伝達人である」という素晴らしいコンセプトを掲げる井戸書店さん、ビールを飲みながら本も選べる元町の古書店1003(せんさん)さんでした。楽しい時間を、ありがとうございました!



★日本図書館研究会 図書館学セミナー「図書館に関係する著作権の動向2015」


さて、本題です。先日、標記セミナーに参加してきました。
著作権という館種を問わず関わりの深いテーマ、そして話をされるのが福井健策先生&南亮一さんとあって、会場はギッシリ満員でした。


図書館界屈指の著作権の大家・南さんですが、この日は「動向を理解するための著作権のキホン」と題し、あえて自称・前座に徹しておいででした。
とても判りやすいお話でしたが、役割上一般論的なものでしたので、ここでの紹介は割愛したいと思います。

また、他の先生方のご講演もありましたが、あまりにも福井先生のお話が魅力的でしたので今回は割愛し、福井先生のレポートに注力したいと思います。

当日の様子は、アカデミック・リソース・ガイド社の岡本真氏がつくってくれたツイートのまとめが詳しいですので、ぜひそちらから。



★「TPPと著作権リフォームのゆくえ」(福井健策先生)


お話はタイトルどおり、TPPにより日本の著作権制度がどのように変わってゆくのか、どういった課題があるのか、お聞かせ頂きました。

私は、福井先生のお話を初めてお聞きしましたが、素晴らしいお話でした。
整理された論点、判りやすく伝える技術、気さくな態度、そして明確なご自身の主張。引き込まれるように、2時間近くお話に聞き入りました。
(テレビ・新聞などでも、著作権の専門家としてひっぱりだこであることが納得です)


お話によれば、TPP知財条項によって様々な点での著作権法改正の可能性があるそうですが、もっとも重要な点は以下の2つかと思います。

  • 保護期間の延長
     著作者の死後50年という保護期間が、70年へ変更。
  • 著作権侵害時の非親告罪化
     著作権者が起訴しない限り国が処罰できなかったものが、今後はそうでなくなる。

(*注)まだTPPが発効した訳ではありませんので、これらは流動的なものです(以下も同様)。



以下、この2点について福井先生がおっしゃったことを、私なりにまとめます。

保護期間が延長されることはそのまま、著作物が自由に使えるまでの期間が長くなることを意味します。
これは、ディズニーに代表されるごく一部の長寿命コンテンツ(=ビジネスとして、死後50年以降も成り立つもの)を保護するためと言ってよいでしょう。

(背景にあるのは、年間15兆円にものぼるアメリカの海外特許・著作権使用料収入です。今回の「死後70年」も、同国が強く推進しています)

青空文庫のように、自由に使えるコンテンツの範囲が狭くなり、ごく一部の権利者や特定の国を利するこの改正が本当に必要か、慎重な検討が必要とのことでした。


また、著作権侵害時の非親告罪化についても、大きな影響があるそうです。
「原作の市場での収益性に大きな影響がある場合」などといった条件が付けられていても、実際の運用は流動的であり不安が残る、とのお話でした。

例えば駐車違反している車があるとき、誰かが警察に電話すれば取り締まりに来ます。著作権侵害についても、グレーゾーンであっても誰かが通報すれば、国は動かざるを得ないかもしれません。

その可能性を考えれば、パロディ、ビジネス等の萎縮が起こり、結果的に日本の文化やビジネス活動に悪影響をきたす恐れもあります。


先生からはこうしたリスクをふまえ、アニメ・コミック・ゲームといった点を含めて日本の文化を考えるときに、今回のTPPに伴う著作権制度の見直しが本当に最善か、と疑問が投げかけられました。
また先生からは、フェアユース導入、アーカイブ推進法の制定などを含めた、日本モデルを模索するべき、とのご指摘がありました。

併せて図書館界に望むものとして、業界としての意見を早急に集約しそれを声明にするべきだ、というお話を頂きました。




★雑感


今回の著作権制度の見直しは、情報の世界における近年の試みと真逆の方向性のように思えます。

近年情報の世界では、様々なデータをアーカイブし、公開し、それだけではなく社会全体で自由に使えるようにしよう、という発想が中心でした。
例えばLinked Open Data、オープンサイエンスといった考え方からもそれは伺えますし、先生のおっしゃった青空文庫、他にも東寺百合文書などといった素晴らしい試みも多く見られます。

こうした私たちの行動と法改正とが噛み合ない以上、先生もおっしゃっていたとおり、自分たちで議論し集約して、それを発信することが重要になるのでしょう。

図書館界で言うなら、日本図書館協会などが中心になって、意見を集約する必要があるのでしょう。
そのためにはまず私たち個々のライブラリアンが、現行著作権制度の課題やTPPをめぐる議論の動向を把握し、自分なりの意見を持つことが大切だと思いました。

今回の法改正への議論は、著作権に関するプロフェッショナルでもあるライブラリアンとして、私たちが本気で向き合うべき案件なのでしょう。

TPP締結、そしてそれに伴う著作権法改正まで数ヶ月しかないかもしれません。
私も急ぎこの件について勉強し、自分なりの意思表示等、何か行動に移したいと考えています。皆さんにも、ぜひそうしたことを一緒に考えて頂ければと思います。


非常に素晴らしいご教示をくださった福井先生、南さんはじめ日本図書館研究会の皆さん、貴重な場をありがとうございました!



●れいこと

最後にまた、れいこ&きょーこの話を。

4年前、れいこは「明るく強く」病気と闘う毎日でした。
そんな中、ちょうど秋のこの時季に、れいこは自然学校に行きました



闘病中で半身麻痺、様々なトラブル。
私たちは不安だらけでしたが、れいこの強い希望もあって、自然学校に参加することにしました。学校や自然学校の手厚いサポートの中、れいこは私たちの手を離れ、5日間を元気に乗り切りました。

たった5日間、されど5日間。
ちょっぴり大人になって、元気で帰ってきたれいこを、私たちはどれほどの喜びで迎えたことでしょう。自分がいかにわが子を愛しているか、改めて感じることができました。


そして今、れいこは星になってしまいましたが、きょーこがそばにいてくれます。
れいこに抱いた愛情まで、きょーこにはかけてやりたいです。小さなことに一喜一憂せず、のびのび育ててやりたいと思っています。

でも、きょーちゃん!
そのイヤイヤ連発をもうちょっと減らしてくれたら、お父ちゃんたちは嬉しいけどな!

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