2009-09-27

日本出版学会 関西部会に出席

 
今日も、どうでもいい話から始まります。

今日、このブログのアクセスカウンターが、3,000を超えました。
カウンター設置が6月下旬ですから、月にちょうど1,000人ほどの方々が、このブログをご覧くださっている計算になります。

最初ブログを設立したときは、1日5アクセスをイメージしていました。
予想以上に大勢の方々がご覧くださって、大いに励みになります。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

-----------------------------------------

さて、今日はもう一つ雑談を。
私の最大の関心事の一つ、Googleに関する情報です。

Googleが行っている、「プロジェクト10の100乗」をご存じでしょうか?
「世界のできるだけ多くの方々の役に立つ画期的なアイデア」最大5件に、1,000万ドル(!)の資金提供を行うというものです。

 Google「プロジェクト10の100乗」
 http://www.project10tothe100.com/intl/JA/index.html

「Google」という社名の由来は、「10の100乗」を意味する「googol」です。設立10周年の企画として、社名を冠するプロジェクトで、社会貢献をしようというものです。
それにしても、1,000万ドルとは!さすがですね~。

-------------------------------------------------------------------

さて、今日の本題です。
25日(金)に、日本出版学会で下記の部会が開催され、出席しました。

日本出版学会 関西部会[09年度第3回]
「デジタル環境下における出版と図書館 ―Googleブック検索訴訟和解案と国立国会図書館の資料デジタル化の動向を中心に」
http://www.shuppan.jp/event/event2009.html#090925

概要は、上記Webサイトにてご覧ください。
講師は、いつも何かとお世話になっている夙川学院短期大学の湯浅俊彦 准教授とあって、今回も駆け付けました。

<そう言えば、23日のエントリーでご紹介した「電子出版学入門」は、この湯浅さんの力作でした。ちょうど思い出して取り上げたのですが、ネタが続いてしまいましたね。

-----------------------------------------

この日の湯浅さんのお話は、以下の3テーマで構成されていました。
  1. Google「ブック検索」著作権訴訟和解案
  2. 国立国会図書館による資料のデジタル化
  3. 電子出版と図書館
-----------------------------------------

1.Google「ブック検索」著作権訴訟和解案

まずは、Google「ブック検索」著作権訴訟和解案に関する経緯や現状に関する説明がありました。
2004年、Googleはハーバード大学等と提携し、蔵書をデジタル化するGoogleプリントプロジェクトを本格化させたことは、よく知られています。
そしてアメリカでの訴訟を経て、2008年10月に和解案が成立しました。ベルヌ条約により、この和解案が日本の著作物にも大いに影響を与えることになってしまったことは、周知の通りです。

湯浅さんはこうした経緯をご説明の後、日本書籍出版協会や日本ペンクラブの対応等を、お話くださいました。
そしてその上で、問題の核心として、以下の3点に言及されました。

  1. Googleによる巨大データベースの完成
    無料プレビューか、有料で全文を販売するかを、著作権者が設定。

  2. 世界の出版コンテンツをGoogleが統括?
    Amazon、Microsoftとの覇権争い、また出版社の権利ビジネスの空洞化。

  3. 日本の出版社の対応
    著作権者とGoogleのやり取りであり、著作隣接権が認められていないため、出版社はステークホルダーでないことが明確に。

ご指摘を受けて、ナルホドと思う私。
私は、Googleがあまりにも強大になり過ぎることに、漠然とした不安を感じてはいます。その意味においては、2.が論点かと。
しかし、とりわけ日本の出版界においては、3.が重要な問題となってくるのですね。

-----------------------------------------

2.国立国会図書館による資料のデジタル化

国会図書館では、文化審議会の中間総括を受けて、2008年度に著作権者団体、出版社団体、大学、公共図書館をメンバーに、「資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会」を立ち上げています。
そして2009年3月、デジタル化の対象、データ管理方針、資料閲覧や複製物提供方法などに関する第一次合意事項を承認しました。

これにもとづき、先日、デジタル化の対象となる雑誌タイトル、年限等が公開されました。今後、これらを軸にデジタル化推進が検討されることになります。

 国立国会図書館「デジタル化対象資料の候補リスト」
 http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization_consult.html#digitization_list

一方で、デジタル化を巡っては、課金・提供方法まで含めて、現在も議論が続いています。
長尾真館長が、出版社にとってのインセンティブ、電子出版への移行時の流通経路等も踏まえて、あちこちの講演でご発言なさっている点にも注目です。

中でも、日本の出版物は日本でデジタル化するべきであること、国会図書館が電子納本を行うべきこと、著者や出版社が受け入れ可能なビジネスモデルを構築し、実際に機能するようにすることなどが、重要な指摘だと思います。

湯浅さんは納本制度審議会の委員でもありますので、その視点から、これらに関する説明を頂くことができました。

-----------------------------------------

3.電子出版と図書館

電子書籍の刊行状況や、Amazon「なか見!検索」、千代田区Web図書館、NetLibrary、フランス国会図書館とGoogleの連携などについて、説明がありました。

なかでも、前フランス国会図書館長のジャン・ノエル・ジャンヌネー氏による、いくつかの指摘を重要なものとして、取り上げられました。
<ジャンヌネー氏は、「Googleとの闘い」で話題になりましたね。

例えば、ジャンヌネー氏は以下の点について、指摘しています。
  • 階層性の問題
  • 言語の問題
  • 多様性の問題
  • 広告の問題
  • 検閲の問題
  • 公的財産のリスクの問題
  • 体系化されない大量の情報の問題
これらに対して、図書館が明確で十分な根拠を持って、その存在を確立する必要があります。

そして湯浅さんは最後に、「競合から協同へ」と題して、図書館と出版社が新たな関係を展望する必要があると述べられました。

資料の長期保存、資料の体系化についてもそう、読者・利用者にとって何が必要かを協議し、その具体的な仕組みを作ることもそうです。
図書館は出版社との新しい関係を模索し、電子出版の波に対応する必要がありそうです。

-----------------------------------------

そして講演の締めくくりとして、配布資料の「Googleブック検索訴訟和解案を巡る関連年表」について説明してくださいました。
その名のとおりの資料で、この件に関する情報75件が、時系列に整理されています。

いやいやさすが湯浅さん、紆余曲折あった一連の動向を、キッチリと整理なさっておいでです!貴重な発表と資料を、ありがとうございました!

-----------------------------------------

ちなみにこの日は、ちょっと事情があって、運営のお手伝いをしました。
受付をしたり、PCの準備を手伝ったりという程度でしたが。
日本出版学会理事のS田先生にも頭が上がらず、講師の湯浅さんにも頭が上がらない私ですので、お二人の言うことは、何でも聞きます。(笑)

・・・というのは、冗談として。
非会員ながら、何度も参加させて頂いていますので、少しだけ恩返しできて、良かったです。

-----------------------------------------

会後、懇親会はないことに決まっていましたのに、無理矢理に皆さんをお誘いする私。根負けした講師や、残っていた何名かの方々とご一緒に、ビールを楽しむことができました。
二次会でも、名刺交換をしたり、久しぶりにお会いした方とお話をしたり。やっぱり、一緒にビールを飲むことも大事です!

講師の湯浅さん、参加された皆さん、(二次会を含めて)ありがとうございました!

-------------------------------------------------------------------

<今日の小ネタ>

毎日、世の中にはいろいろなニュースが飛び込むものです。
このブログでも、広く取り上げていきたいと思いますが、当然限界があります。

そこで、「こんなニュースがありますよ~」程度に、簡単に紹介だけするコーナーを設けることにしました。図書館や本の話に加え、情報検索のインフラ・Google情報も扱っていきたいと思います。

-------------------------------------------------------------------

<どうでもいい独り言>

最近耳にした、レトロ調な会話(すべて、実話)。
  • (ヘッドフォンで音楽を聴いていて、呼びかけに気付かなかった私に対して、駐輪場のおっちゃんが)「兄ちゃん!耳栓しとったら、聞こえんぞ!」
    ・・・いや、耳栓じゃないっしょ、コレ。

  • (電車からベビーカーを降ろそうとしているお母さん。ベビーカーの反対側を持って、一緒に降ろしてあげた私に対して、知らないおばちゃんが)「乳母車持ってあげるたぁ、偉いな、兄ちゃん!」
    ・・・いや、乳母車じゃないっしょ、コレ。

  • (電車で隣に座っていた、年配の上司と部下らしい二人の会話)
    上司:「わが家は振り込め詐欺に備えて、合言葉を作ってあるんだ」
    部下:「いいですね、それ!」
    上司:「妻が「山」と言って、僕が「川」と答えられれば、本物だ」
    部下:「さすがですね~、これで大丈夫ですよ!!」

    ・・・いや、今どき「合言葉」でもないし、「山」と言えば「川」じゃ機能してないし、部下の露骨な世辞もおかしいし、あ~、どこがツッコミどころか判んないっしょ、コレ~!

ネタじゃなくて、ホントに実話なんですよぉぉ!信じて!
(ホント言うと、3つ目のネタは、だいぶ前ですが。とにかくこれも、JR福知山線車内での実話)
<ネタで作ったにしては、ベタベタすぎるでしょ?
 

2 件のコメント:

71年生まれの同窓生 さんのコメント...

こんばんは。
先日はこの部会にご一緒させていただき、ありがとうございました。
いつもながら、詳しいレポート、すばらしいですね。

先月発表された、Google とオンデマンドブックス(ODB)社との提携の話題について、今朝の朝日新聞にちょこっと出ていたのですが、ODBのエプスタイン氏は、これからの書籍出版は、「もう一度、多様で、創造的な、自立する単位としての過程的産業になるであろう」と予測しているそうです。
気になるのは、そのときに図書館はどういう役割を果たすのか、ですよね。

そして、井上さん、なんとU40のサポーターもされているのですか。さすが活動範囲幅広いですねー。

井上 さんのコメント...

>71年生まれの同窓生さん、
こんにちは!
いつもこの、ヘッポコブログをご覧くださって、ありがとうございます!

こちらこそ、日本出版学会では、ありがとうございました。
「詳しいレポート、すばらしい」かどうか判りませんが、何らかの情報提供になればと。

>Google とオンデマンドブックス(ODB)社との提携の話題について、

朝日新聞に出てましたか?読み損ねています。
読んでいないのでコメントも難しいのですが・・・Googleブック検索で全文が読め、それらが簡単に製本されて図書館に納められるようになれば、おそらく非常に大きな変化になるのでしょうね。

一方で、ダウンロードできる「本」を、製本したがるユーザーがどれくらいいるのかは未知数。

現時点では、ブック検索にある和書は、おそらく慶應大学さんの蔵書が中心にスキャンされているようですね。
しょうもなさそうな本を、ブック検索で探してみましたが、なかなかヒットしませんでした。

>なんとU40のサポーターもされているのですか。さすが活動範囲幅広いですねー。

「さすが」なんてものじゃありませんが、とりあえず手伝いくらいやってみようかと。
これでまた、いろいろな方とご縁が出来て、こうしたやり取りができるようになりますように!

では、71年生まれの同窓生さん、これからもよろしくです!