2013-05-19

教える、ということ。
(ダイトケン大阪支部例会「新学期ガイダンス」参加報告)


久しぶりに、ちょっとした衝撃を受けました。
ダイトケン(大学図書館問題研究会)で、お隣の大阪支部の例会「新学期ガイダンス」に参加してきたのですが・・・衝撃的でした。


久しぶりに、高揚感を感じた勉強会となりました。簡単にですが、レポートしておきましょう。


○一番印象に残ったこと+考えたこと

  • 私たちライブラリアンは、人に何かを教えるということを、どこまでも突き詰めて考えないと!
  • 考えたことは、少しずつでも実行に移そう。改善の余地は、いくらでもある。
  • 自分のガイダンスが完成形に近づいたと思ったら・・・それは思考停止であり、ユーザーにとって最大の不幸。


○反省

白状しましょう。
私は、自分のやっているガイダンスがそれなりのクオリティーを持っていて、とても判りやすいつもりでいました。しっかり練っていて、ある程度実情に適合した完成形に近づきつつある・・・とまで思っていました。
(実際、参加者アンケートでも、そこそこ胸を張ることができる評価を頂いてきました)

・・・が!
その認識を改めなければいけない、とこの日はっきりと感じることができました。

この日の例会では、何人かの図書館員が、自館のガイダンスを紹介しました。それぞれが自館 や大学の状況に合わせ、学生さんたちに何を伝えるべきか、どうすればそれを伝えられるか、真剣に考えて続けていることが伺えました。

私には、いささかの慢心があったように思います。反省。


○大阪大学附属図書館の事例

各図書館の事例報告はユニークなものでしたが、もっとも印象的だったのが、大阪大学の2つのご発表でした。

1つ目は、大阪大学附属図書館が授業の中で、ほぼ全新入生に実施している「情報活用基礎」の報告で、お話は関西期待の若手・S田さんでした。

このガイダンスでは、教材を(パワーポイントではなく)Webサイトの形にしていて、学生さんにブラウザで見せるようにしています。まず印象的だったことは、学生さんたちが、抵抗なく使うと思われるインターフェースでした。




この資料は、大阪大学附属図書館公式サイトに掲載されていますので、そちらをご覧ください。
(時間割スケジュール等を設定しないと見られないようですので、リンク先のページ下部にあるサイトマップからご覧になるといいでしょう)

資料を見ると、文字は極力減らし、ゆったりとした配置になっています。
ほどよいイラスト、多用されているクイズ・問題。しかも、クイズがブラウザ上でドラッグ&ドロップしたり、どのように調べていくかをラジオボタンで選ばせたりするなど、心にくいほどです。

デモ画面を拝見して、「この画面なら、学生さんたちも抵抗なく使えるよな〜」と感心すること、しきりでした。

もちろん画面のデザインだけではなく、構成もよく練られています。
冒頭に出てくる「大学での学びとは」・「レポートとは」といったことや、レポートの構成・作成プロセスなどは、利用者アンケートでは上位に評価されている項目とのことです。


このように、内容+インターフェースともに優れた大阪大学さんの授業用サイト、とても優れたものだと感じました。
国立大学さんなどであれば、こうしたガイダンスや利用者教育(私はこの言葉が嫌いですが)のためのチームがあることが多いですね。

せいぜい1〜2名が兼務で実施する短大図書館などと違い、チーム内でしっかりと議論し、特技を活かし合ってこうしたコンテンツを作成できていることが、事例報告からも伺えました。


○大阪大学生命科学図書館の事例

そしてさらに印象的だったのが、この生命科学図書館の事例です。
この図書館で、何と15年も勤務されたSさんによるご報告でした(国立大学では、普通ないですよね?)。

まず驚かされたのが、冒頭で説明された「カウンターこそが教育サービスの中核的な場」という位置づけでした。


この考えには、非常に驚かされました。
わが国においては1990年前後から授業との連携・教員とのタイアップが叫ばれ、金科玉条のごとく唱えられてきました。それと齟齬は来さないまでも、明らかに志向が異なります。

今や、カウンターの重要さを否定するライブラリアンはいないでしょう。
しかし、ここまでカウンター重視の姿勢を持ち、しかもそれを基本スタンスとして鮮明にするライブラリアンもまた、ほとんどいないと思います。

Sさんは、「高々1.5〜3時間の授業の教育効果を過信しない」とまで断言されていました。
授業などで行うガイダンスはすべてオマケ(?)的なもので、日々カウンターで対面して直接ニーズを掘り起こすこと、それを繰り返し継続的に学生に学ばせることが教育である、と言わんばかりでした。

お聞きすると、Sさんの信条が浸透し、それが生命科学図書館のポリシー(?)となっているご様子。
この信条自体の評価は意見が分かれるかもしれませんが、それを明らかにし、チームとして取り組んでいること自体に組織としての強さやビジョンの存在を感じました。


Sさんのお話には、もう一つ刺激的な部分がありました。
それは、「OPACの使い方」のような情報提供マターは、「教育」とは言わないというご意見でした。

そうした検索スキルなどはパンフレットで読めばいいのであって、講習会などで伝えるのは「教育」に値するものだけ、とのことでした。
その人を人として、研究者として成長させる知識や、教えなければ分からない知識を教えることが図書館の使命である、とお考えのようでした。

「教育」に値する知識として例に挙げられていたのは、以下のようなものです。

  • 先行研究調査は、発見的ではなく系統的な探索を。
  • 雑誌論文は局所的に探せず、グローバルに探さなければならない。
  • レビュー対象文献の年代を区切るのも根拠が必要。 などなど。

残念ながら、これらについて一つ一つ詳細には伺う時間がありませんでした。
Sさんはいろいろと論文などを書かれている上、ちょうど今年本を執筆されたばかりとのことで、この辺りを読んで勉強したいと考えています。



ともあれ、Sさんのお話は魅力いっぱいでした。久しぶりに、衝撃を受けたと感じています。
この日お聞きした内容を咀嚼し、自分のガイダンスにフィードバックしていきたいと思っています。

最近ちょうど考えていたのが、ガイダンスなどで細かい検索方法を教えるのは枝葉の話であり、もっと幹の部分を伝えていかなければいけないと感じていました。
その幹の部分というのが、Sさんのおっしゃる「教育」と言えるような内容なのだと思います。
これについては、また後日改めて触れたいと思います。

発表をお聞かせくださったS田さん、Sさん。それに幹事のTさん、大阪支部の皆さん、ありがとうございました!


○改めて反省

この日は本当に、いい刺激を受けて帰ることができました。
改めて、人に教えるとはどういうことか、という問いに立ち返ったような気がします。

振り返ってみれば、私も図書館勤務歴だけは長くなり、多少の思い上がりがあったのかもしれません。初心を忘れず、前を向いて頑張っていきたいと思います。


ついでに、宣伝です。
この日の例会を企画してくださったのは、ダイトケン(大学図書館問題研究会)大阪支部でしたが、どの支部も常時新入会員を募集しています。
一緒に他大学・短大の図書館員と勉強してみよう、仲間を作ってみよう、という方、ぜひお気軽にお声がけください。

私は兵庫支部の支部長をしていますので、兵庫にお住まい・お勤めの方には、特にアピールをしておきたいです。兵庫の皆さん、いつでもお待ちしています!

そうそう、兵庫支部の懇親企画「図書館員行饂飩乃国讃岐(ライブラリアンが行く!香川うどんの旅)」も、あと若干名だけ募集しています。まもなく締め切りますので、お早めに!
<あ、宣伝の方が長くなっちゃった・・・。(汗)



●れいこと

最後に、れいこの話を。

先日ご案内しました、「れいこパーティー」
1日目が6月2日(日)ですから、開催まであと2週間ちょうどになりました。


2日目は、れいこのセカンド・バースデーになる6月6日(木)です。
しんみりせず、みんなで明るくれいこを囲んで、楽しく過ごしたいと思います。皆さん、よかったらぜひ気軽にお立ち寄りくださいね!


それでは、押忍!

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