2013-02-22

【参加報告】「水に濡れた紙とフィルムの修復ワークショップ」

2月16日(土)に、「水に濡れた紙とフィルムの修復ワークショップ」に参加してきました。

主催が歴史資料ネットワーク、共催・映画保存協会、後援には先日ご紹介したエル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)・大阪歴史学会近世史部会・大阪歴史学会近代史部会という開催形式でした。

参加者は日本史関係(と言うのがいいのかどうかも判りません)の研究者が多く、いつもの図書館員だらけの研修会とは違って、とても面白い場でした。

以下にレポートしていきますが、図書館の方へ一つ注意点です。
ここで言う水に濡れた資料の修復とは、図書館資料が雨に打たれて・・・というシーンを想定しているのではありません。大規模災害などで、古文書やフィルムが泥水をかぶった場合などの対応を指します。

この辺りのニュアンスを理解しておかないと、ちょっと話が噛み合いません(私もワークショップ開始後15分くらい、??でした)。


○講演の部

講演のうち最も印象的だったのは、歴史資料ネットワークの河野未央さんのお話でした。

特に印象に残ったのは、史料の救命士の輪を広げよう、というご意見でした。災害などで水に濡れてしまった史料に対し、まずは応急措置的なレスキューをできる人/ネットワークが必要、とのお話でした。
台風などの水害の際は、膨大な史料が水損します。修復の専門家がすべての史料を救済する余裕はありませんので、ボランティアグループなどによる迅速なレスキュー活動が大事、というわけです。

河野さんはご自身の経験から、専門家(修復活動のリーダー)+ボランティア(実際の作業部隊)に加え、その間に入ってマネジメントをする人材の重要性を訴えられました。マニュアルの整備、ワークショップ等による情報共有やネットワークづくりも大切とのことでした。

私は今まで、史料の修復で専門家以外の人が携わるなど、考えたこともありませんでした。まして、マネジメントをする人材やボランティアの組織化、マニュアル化の必要性・・・!

このお話は、目から鱗が落ちた、という感じでした。現場で実際に汗をかき、大勢の人たちと史料を救ってきた方ならでは、とでも言いましょうか。
河野さん、貴重なお話をありがとうございました!


講演は他に映画保存協会から、水損フィルム・ビデオテープの洗浄や、協会の活動紹介などがありました。


○体験・水損フィルムの洗浄

映画保存協会の鈴木伸和さんを講師に、水損した8mmフィルムの洗浄を実際に体験しました。



2〜3人のチームで実際に、泥水に浸かったフィルムを洗浄し、乾かしました。講師の鈴木さんが丁寧に指導してくださったおかげで、全員が洗浄作業をよく理解できました。

ごくごく入門的なものではありましたが、自分でフィルムを確認しつつ乾かす作業を体験することができて、良かったです。
やっぱり何でも、自分でやってみませんとね!


○体験・紙史料の乾燥

フィルムに続き、今度は和紙でできた紙史料を乾燥させる体験をしました。
講師は、歴史資料ネットワークの吉原大志さんです。実際に、歴史資料ネットワークが使っている技術を教えて頂きました。


キッチンペーパーなどを使い、根気よく史料の水分を抜き取っていきます。水分が抜け、史料がどんどん軽くなっていくのが、よく判りました。
また、自身の健康管理のため、マスクなどの着用が重要であることなど、現場に即した知識を得ることができました。

鈴木さんと同じく、吉原さんは丁寧にご説明くださり、一つ一つ参加者に体験をさせてくださいました。お二人の素晴らしい講師ぶりには、本当に感謝です!


○ついでに懇親会

大いに学び、楽しんだワークショップ。
勢いに乗って、懇親会にも参加してきました。冒頭でもお伝えしましたように、日本史関連分野の研究者ばかり。いつもの図書館員ばかりの研究会と違い、完全にアウェー感ただよう場でしたが、思い切って飛び込んできました。

・・・が、いい意味で、見事に予想を裏切られました。
実に、実に楽しい時間を過ごしました。博士課程など研究者も多かったためか、日本史研究、市史編纂、古文書といった感じのキーワードから始まったのですが・・・酒が進むうちに、育児や茨城弁、広島カープに至るまで、いろいろな話題で盛り上がりました。

図書館員は横の結束は強いですが、なかなか他の分野に飛び込めないところはあると思います。異分野との交流、皆さんも何かのきっかけがあれば、ぜひ違う世界を体験してみてはいかがでしょうか。


なお、このワークショップの報告は、歴史資料ネットワークのブログや、私の応援するエル・ライブラリーのブログ工房レストアさんのブログにも掲載されています。よろしければ、ぜひご覧ください。

歴史資料ネットワークはじめ関係者の皆さま、貴重な機会をありがとうございました!



●第2回(通算第92回) 古典籍研究会のご案内

直前ではありますが、勉強会のご案内を差し上げます。ご関心のある方は、ぜひご参加ください。
もちろん私も、参加します!(古典籍のことは全然判りませんが、やさしくお話くださるそうです)

古典籍研究会は、図書館職員(及び司書をめざす学生)、ならびに国内外の古典籍・書誌学に関心のある方を対象とした研究会です。非会員の来聴も歓迎いたします。

【日時】2013年2月23日(土)14:00~16:30(受付開始13:30)
【場所】神戸女子大学・三宮キャンパス内・三宮教育センター・特別講義室(神戸市中央区中山手通2-23-1)
【プログラム】「モノとしての西洋古典籍の価値~西洋史学者の視点から~」指昭博氏(神戸市外国語大学・教授)

【参加費】無料
【参加申込み】事前のお申込みは不要。来聴歓迎。
【お問い合せ先】古典籍研究会事務局 kotenseki@gmail.com



●どうでもいい独り言

皆さんから、絶大な応援を頂いたれいこと井上家。
今もなお、多くの応援を頂いていることを感じる日々です。

何かとお声がけ頂いたり、バブーちゃんのための服やベビー用品を頂いたり。何も言わないけれど、気遣ってくださっている方がいることも、よく判ります。



十分なお礼も言えず、気持ちを表すこともできていないと思います。
でも、皆さんのご厚情は、しっかりと伝わっています。今もなお辛い日々が続きますが、皆さんのおかげで頑張れています。
皆さん、本当にありがとう。

それでは、押忍!

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